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部分供給廃止でフィジカルPPAに制限か

経産省の改正案に不満続出

経産省が部分供給の一部を廃止する方針を固めた。太陽光発電所を活用するフィジカルPPAが制限されるため、不満の声が続出している。(本誌・岡田浩一)

2024年3月29日、経済産業省は有識者会議で部分供給を見直し、一部の部分供給を廃止する意向を示した。早ければ24年5月末にも適用する構えだ。

部分供給とは、一つの電力消費者に対し、電力小売り会社が一定量のベース供給を行いつつ、 他の電力小売り会社が負荷追随供給を行う供給形態を指す。東日本大震災後の電力需給の逼迫を受け、新電力会社が持つ再生可能エネルギー発電設備なども活用する目的で13年に定められた仕組みだ。

これにより、夜間に調達できる電源のない新電力会社も、客先の不足分の電力を大手電力会社が供給してくれるため、電力小売りに参入でき、電力市場が活性化する側面もあった。それゆえ経産省はJEPX(日本卸電力取引所)が機能するまでの一時的措置として部分供給を認めてきたのだ。

だが、この部分供給のルールを用いてJEPX価格の安い時間帯のみ電力を販売する新電力会社が現れた。大手電力会社は、新電力会社の部分供給を電力消費者から要請されれば、応じなければならないため、JEPXの高い時間帯の電力供給を強いられることになった。そこで経産省は制度の趣旨に合わないと判断し、部分供給の廃止を検討し始めた。

もっとも、大きく3つに分類される部分供給のなかで、今回廃止されるのは『通告型』と呼ばれるものである。通告型とは、部分供給する新電力会社が電力を販売する時間帯と量を事前に大手電力会社へ報告し、それに基づいて大手電力会社が不足分の電力を供給するという形態で、〝非FIT〟太陽光発電所を活用するフィジカルPPA(電力売買契約)もこの通告型である。

このため、フィジカルPPAを活用してきた電力消費者や新電力会社の間で不満が続出したのだ。というのも、通告型部分供給が認められなくなると、電力消費者はフィジカルPPAと電力小売りの契約を1社にまとめて委託しなければならない。PPAの多くが長期契約ゆえ、毎年見直せたはずの電力小売り契約まで長期で結ばなければならなくなるのだ。あるメーカー関係者は、「再エネ電力の調達法が制限されてしまう」と懸念する。

一方で、再エネ電源しかない新電力会社にとっては事実上フィジカルPPAを活用できなくなるため、ある新電力会社の担当者は、「この案が通ると、火力発電所や原子力発電所を保有して夜間も電力を販売できる大手電力会社しかフィジカルPPAを提案できなくなるので、再エネ系新電力会社の成長の芽が摘まれてしまう」と語気を強める。

実際、会議に参加した委員からも「大手電力会社との電力小売り契約を継続しつつ、(新電力会社が提供する)オフサイトPPAを活用したいという声もある」、「新電力会社による再エネ電力の部分供給を活用しながら電力を販売したい大手電力会社もある」といった声もあった。

ともあれ、経産省は24年4月中に意見公募を開始し、5月中に通告型部分供給の新規契約受付を停止する方針だ。既存のフィジカルPPAに対しては当面認めつつも、契約の更新時に通告時間の見直しなどを求める方向だ。なお、太陽光発電所を活用する自己託送は、「部分供給に当たらない」(経産省)ため、今回の見直し案では制限されない。

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