[特別対談第14回]ドイツに見るPVの未来 日本再生可能エネルギー総合研究所 北村和也代表×ESI土肥宏吉社長

2017.06.01

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 ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。今回は、再生可能エネルギー分野のコンサルティングを手掛ける日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也代表を迎えて、ドイツに見る太陽光発電の未来を考える。

土肥氏●再生可能エネルギーの普及拡大から電力自由化まで、時に失敗もありましたが、世界的に見て先行している国はドイツでしょう。そこで今回は、ドイツの再エネ事情に詳しい北村さんをお迎えして、「ドイツに見るPVの未来」というテーマでお話しさせていただければと思います。
 ところで、北村さんは最近、ドイツのシュタットベルケに倣って、地域エネルギー会社の立ち上げに尽力されていらっしゃると聞いております。

北村氏●はい。最近になってシュタットベルケのような組織を日本に広めようとする動きが出てきましたが、シュタットベルケ自体、新しい組織ではありません。エネルギー供給や生活インフラの運営を担う地域の事業体のことで、ドイツでは100年以上前に組織化され、現在900程あります。
 自治体が出資しているケースが多いのですが、それは、各地に電灯やガス灯が点ったときに、それらの管理団体として自治体の支援のもと誕生した経緯があるからです。やがてシュタットベルケは、電力やガス、水道の販売から交通に至るまで、公共サービスを手掛けるようになります。
 よく、地域のエネルギー会社というと、地域資本の発電所を連想される方が多いのですが、私がお手伝いさせていただいているのは、発電所の開発というよりは、エネルギーを調達して地域に供給するエネルギーのハンドリングを担う会社づくりです。地域資本で、地域でつくったエネルギーを地域に供給する仕組みづくりを目的としています。

土肥氏●なるほど。地域内のエネルギー循環を目的とすると、地域の再エネ発電所だけでは片手落ちで、やはりエネルギーの調達・供給を担う会社が必要です。発電所の開発に比べれば、比較的小資本で進められますし、とても現実的な取り組みですね。たとえば、ドイツのシュタットベルケで、ハンブルグエナジーという会社がありますが、彼らの自給自足モデルは非常に面白いと思います。

北村氏●ハンブルグのような大都市になると、再エネの自給自足、とくに生産が難しいのですが、ハンブルグエナジーは域内100%再エネを目指しています。特に水素を活用して全面水素バスに置き換えようとしているところが特徴的です。ドイツでは、水素を活用するにしても、再エネ電源による水の電気分解で製造した水素しか評価しないなど、徹底しています。

土肥氏●私はこれまで、水素社会の到来は、まだ先になると思っていましたが、最近は考えを改めました。実際に、当社にも、水素の製造を目的に太陽光発電設備を導入したいという依頼が増えているのです。

北村氏●水素を活用すれば、再エネ電力を貯蔵できますし、燃料電池を使えば、電力だけでなく熱エネルギーも供給できます。さらには、モビリティの動力源にもなりますから、可能性は広がります。

土肥氏●そう考えると、太陽光発電の普及に伴い、地域内のエネルギー循環や水素社会の実現など、多方面への広がりも期待できますが、太陽光発電そのものも、今後は自給自足モデルに移行され、まだまだ拡大すると思います。
 FITは、太陽光発電を普及させるうえで起爆剤として有効ですが、電力系統の問題や国民負担の増大などを考慮すると、限界があります。これに対し、自給自足モデルは、蓄電池はもちろん、日射量の予測技術なども進めば、ビジネスは無限に広がります。
 確かに、蓄電池のコストが高いため、自給自足モデルは時期尚早との意見もありますが、私は必ずしも自給自足イコール蓄電池ではないと思っています。物流施設であれば、屋根に設置した太陽光発電設備を、大型冷蔵庫の冷却用電源として使用できますし、運搬用のトラックやフォークリフトを電動に切り替えれば、これらの電源にもなります。電気自動車の普及如何によっては、電気自動車が定置式蓄電池に取って代わることも充分考えられます。

北村氏●そうですね。そもそもFITはなくなることを目的とした制度ですから。そして、土肥さんがいわれるように、今後は自家消費が主流になるでしょう。実際、ドイツの太陽光発電マーケットは、2015年に1・46GWまで落ち込んだのですが、16年には1・52GWへ上昇し、17年は2GWへ拡大すると見られています。この要因は、自家消費利用の拡大です。ちなみに、蓄電池の出荷台数は16年2万セットでしたが、17年には4万セット売れると予想されています。
 再エネ電源のなかで、太陽光発電は安くて使いやすく用途が広いので、圧倒的に普及していくと思います。

土肥氏●FIT売電から自家消費利用への大きな潮流の変化があって、そのなかで様々な利用形態が生まれていくというのが、太陽光発電の未来でしょう。ビジネスモデルの創出と、それをどう広めていくか、民間企業の力が試されるときですね。

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