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営農用太陽光、FIT認定数と転用数に大きな乖離

低圧規模の営農用太陽光発電でFITの認定数が急増しているが、農地一時転用の許可数が少ない。なぜか。(本誌・中馬成美)

経済産業省の公表資料によると、2020年4月から21年3月末までの低圧営農用太陽光発電のFIT認定数が実に3520件にのぼっていたことが分かった。これまで営農用の申請数は多くても年間600件程度だったから、20年度は劇的に増えたわけだ。しかし、同時期の農地の一時転用許可数は28件しかなく、FIT認定数と転用許可数で大きな乖離が生じている。

営農用には、FIT認定後3年以内に農地の一時転用許可を取得しなければ、認定が失効するというルールがある。それだけに、経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー課の澤村新之介課長補佐は、「懸念点として数字を公表した。実態把握に努め、農林水産省と今後の制度運用についてすり合わせていく」という。

もっとも、20年度から低圧太陽光発電のFITルールが改正され、荒廃農地を活用する場合などの要件を満たした営農用のみ全量売電が認められることになった。それゆえ営農用に商機を見出す事業者が増え、FIT認定数が急増したのだろうが、ではなぜ一時転用許可数が極端に少ないのか。

理由は2つ考えられる。事業者が農地の一時転用許可を申請していないか、許可を得られないか、である。

これについて、ある営農用の事業者は、「営農用であることを伝えずに低圧太陽光発電所として投資家に販売するブローカーがいる。彼らがFIT認定の申請をとりあえず出したという状況ではないか」と推測する。

農林水産省農村振興局農村政策部農村計画課の高橋正智課長補佐も「下部農地の営農について熟度がないものが多く申請された可能性はある」と懸念する。

むろん、農地の一時転用許可の申請には、営農計画を策定しなければならず、相応の時間はかかる。千葉エコ・エネルギーの馬上丈司社長は、「FIT認定の取得後に融資がおりて始めて営農計画を策定するのが通例だ。農業の暦を考えると、計画に1~2年かかる。それに電力系統に制約がある地域では連系まで3年かかる場合もある」と語る。

一方で、申請済みながら農地の一時転用許可が得られていない案件もあるだろう。一時転用許可の手続きは通常1ヵ月程度だが、半年以上かかることもある。営農用では、営農の継続が見込めない案件も散見されているだけに、農業委員の審査は慎重になりがちだ。

静岡県農業会議では下部農地で茶を栽培する営農用太陽光発電を行う事業者を見学

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