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新電力撤退に大手電力受注停止

電力小売り混乱拡大

新電力会社の事業撤退が相次ぐなか、大手電力会社が新規受注を停止した。一方で最終保障供給の料金が上がる懸念もある。企業の電力調達に混乱が広がっている。(本誌・中馬成美)

2022年3月頃から新電力会社の事業撤退や新規受注停止が相次いだ。

楽天エナジーは3月4日、『楽天でんき』と『楽天でんきビジネス』の新規受付けを停止した。調達先の取引価格が前年比2.7倍に上がったとし、3月30日には楽天でんきの料金改定と燃料費調整制度の上限価格撤廃を実施すると発表した。

電力取次のボーダレス・ジャパンは3月24日、『ハチドリ電力』のオール電化プランの新規契約受付けを一時停止した。21年10月から慢性的に電力卸売価格が高騰したうえ、ウクライナ情勢で電力調達の先行きが不透明になったためとしている。

3月31日には、再生可能エネルギー開発大手のウエストホールディングスが電力小売り事業から撤退すると発表。世界的なエネルギー価格の高騰とウクライナ情勢の影響から電力調達が厳しくなると判断し、6月30日を最終日に電力供給を取り止めるという。

混乱が広がったのは4月以降である。新電力会社の事業撤退を受け、電力調達先を失った企業は、大手電力会社に駆け込んだが、大手電力会社まで高圧・特別高圧需要家の新規受注を停止したため、電力契約を結べなくなったのである。

実際、大手電力10社に確認したところ、北海道電力と沖縄電力を除く8社は、新規受注を停止しているか、もしくは停止せずとも消極的な姿勢を示している。

東京電力エナジーパートナーは、「申し込み自体は受付けているが、個別協議の結果、契約に至らない場合もある」と回答。東北電力、北陸電力、四国電力は、「工場の新設などによる新規契約には予め確保していた供給力で対応するが、他社からの契約切り替えには応じていない」とし、高止まりしている卸電力市場からの追加調達を避けるためだという。中国電力は「受付が難しい状況」とし、九州電力は「低圧の法人も原則受付を停止している」と回答、中部電力ミライズは、「原則受注を停止しているが、新たな料金プランの導入を検討している」と答えた。

対応には多少の違いこそあるが、新規受注を停止した大手電力会社では、今のところ受注再開の目途が立っていない模様だ。

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