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リコー、ペロブスカイト太陽電池の実証開始

公共施設2ヵ所に設置

リコーらが実証を行うペロブスカイト太陽電池を内蔵した小型の街灯

リコーは2024年2月1日、東京都大田区と神奈川県厚木市の公共施設において、ペロブスカイト太陽電池の実証実験を開始すると発表した。小型の街灯用として設置し、性能や耐久性などを検証していく。

同社は、東京都大田区の馬込第三小学校と神奈川県厚木市の市役所本庁舎の敷地内にガラス基板のペロブスカイト太陽電池や気象センサなどを内蔵した小型のLED街灯を設置する。前者には1月31日から5本を、後者には3月1日から3本を設置し、各々1年に亘って実証実験を行う。

出力などの細かな性能は非公開としたが、発電した電力は支柱に内蔵した蓄電池にためつつ、照明用のほか、温度や湿度、照度、二酸化炭素濃度を測定する気象センサの無線通信用として活用する。実証実験にはリコーとリコージャパンに加えて、街灯の開発・製作で因幡電機製作所が、制御回路基板の開発で竹中製作所が、無線通信で立花電子ソリューションズと大阪エヌデーエスがそれぞれ参画した。

リコーはかねてより複合機開発などで培った有機感光体技術を応用する形で有機系太陽電池の研究開発に乗り出し、15年頃、ペロブスカイト太陽電池の開発に着手した。JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同開発を経て、23年にはセブンイレブンの店舗の壁面を活用した実証実験を始めており、今回はそれに続くものとなる。

同社リコーフューチャーズBUEnergyHarvesting事業センターの田中哲也所長は、「一定の耐久性が確認できなければ実用化には近づけない。実環境下での実証実験を通じて実用化を早めたい」としたうえで、「小型の街灯であれば、太陽電池が小面積でよいうえ、系統からの電力購入や配線工事が不要になるなど利点を打ち出せる」と話す。

もっとも、同社は19年に同じ有機系太陽電池の固体型色素増感太陽電池を実用化しており、同太陽電池で10年相当の耐久性を確認。そこで用いた耐久性に関する封止技術もペロブスカイト太陽電池の開発に活かしたという。

今後の実用化に向けては耐久性や性能の向上だけでなく、大面積化や大量生産技術の確立も重要だ。同社先端技術研究所IDPS研究センターの太田善久所長は、「実際の大量生産時には当社の印刷技術も応用できるはずだ。社会実装に近づける1年にしたい」と語る。

発電した電力はLED照明などに活用

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