規制強化で不適切案件続々発覚
認定取消32件 交付金一時停止370件
経産省はこのほど、不適切な再エネ案件を公表した。FIT・FIP認定の取り消しが32件、FIT・FIPの交付金の一時停止は370件に上っていたことが分かった。再エネ特措法の改正による規制強化が背景にあるようだ。(本誌・土屋賢太)
経済産業省は2025年5月12日、太陽光発電事業のFIT・FIP(フィード・イン・プレミアム制度)認定12件と小水力発電事業1件を取り消したほか、取り消しの通知を受け事業者が自ら廃止した事業廃止が19件あったと公表。25年5月19日には370件に及ぶ太陽光発電事業に対してFITやFIPの交付金の一時停止を実施したと公表している。ここに来て不適切案件が続々と発覚した背景には、24年4月施行の再生可能エネルギー特別措置法の改正による規制強化がある。
改正再エネ特措法には、発電事業者による説明会開催の事前周知の義務化などの要件が加えられたほか、違反事業者に対してFITやFIPの交付金を一時的に留保するという措置も盛り込まれた。経産省は、改正再エネ特措法に基づき現地調査を実施し、24年度には計3回に亘って森林法や農地法等の関係法令違反などを確認、対象の事業者にFITやFIPの交付金の一時停止措置を下した。
経産省は25年5月から26年3月にかけて、土砂災害などの危険性のある約1700ヵ所の再エネ発電所を対象に外観調査と立入調査を行う予定である。
経産省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー課再生可能エネルギー推進室の館村宥紀室長補佐は、「事前説明会の義務化、交付金の一時停止、現地調査の3つは、いずれも効果があった。不適切な開発の抑止にもなっている」と述べつつも、「長期安定適格太陽光発電事業者制度や25年10月に導入する屋根上太陽光の初期投資支援で、引き続き再エネの普及を促していく」と話す。
なお、今回、認定を取り消された事業者は、エイチディーオー(広島県福山市、板倉日出生社長)と、松野コンクリート工業(岐阜県瑞穂市、松野安洋社長)、中部電力、エコ革(栃木県佐野市、伊藤繁三社長)の4社だった。太陽光発電所では、エイチディーオーが発電設備の構造が認定基準に適合しないという理由で2件取り消され、松野コンクリート工業が農地法違反で10件の認定を失効した。エコ革は認定計画上の設置場所以外に発電設備を設置したことが原因で取り消しの通知を受け、19件もの事業を自ら廃止した。
ともあれ、地上設置型の太陽光発電所の開発では地元住民とのトラブルが多く、福島市に続き、北海道釧路市が『ノーモアメガソーラー宣言』を発表。条例で規制を設ける自治体が増えているが、脱炭素社会の実現を考えると、地上設置型の太陽光発電所はまだ足りない。課題は山積みだ。