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エフビット、余剰電力活用型 オンサイトPPA開始

全量自家消費が主流のオンサイトPPAで余剰電力を活用する新たなモデルが誕生した。新電力会社のエフビットコミュニケーションズが電力小売り事業に活かす仕組みを構築した。(本誌・中馬成美)

グリーンボンドによる資金調達で建設した岐阜羽島PDセンター

新電力会社のエフビットコミュニケーションズ(京都市、吉本幸男社長※吉の字はつちよし)は2021年8月10日、物流大手のセンコーが所有する大型物流施設にPPA(電力売買契約)モデルを活用して太陽光発電設備を設置し、余剰電力を引き取る新たなサービスを開始すると発表した。21年中の開始を目指す。

同社は太陽光発電の設備導入費用を負担する代わりに、20年の契約期間中、発電した電力の自家消費分を従量課金制でサービス料として徴収し、余剰電力を無償で引き取る。余剰電力は、環境価値付きの電力として自社の小売り事業で活用するほか、今後、自己託送制度を利用して他拠点へ電力供給する予定だ。

屋根面積9335㎡のうち5375㎡に出力1051kWの太陽光発電設備を設置した。当初は全量自家消費用の太陽光発電設備の設置を検討していたが、冷凍・冷蔵設備がなく、電力消費が小さいうえ、屋根が広いことから、余剰電力活用モデルの導入に至った。余剰電力を発生させないよう電力消費に対して少ない容量で設備を設置する全量自家消費型に比べて使用電力に対する太陽光発電比率は向上するようだ。エフビットコミュニケーションズ営業統括本部の山田明典次長は「電力消費量に対して過剰に設備を設置しているので、電気使用量のうち40%程度を太陽光で賄える」と説明する。

同モデルの実証試験は、同社と日本ユニシス、センコーの3社で行う。余剰電力が発生する場合、逆潮流分の発電量を発電計画販売に含める必要があり、PPA事業者にとってはインバランスリスクが高まる。そこで同社は、太陽光発電の電力量と余剰電力量の予測、PPAモデルの料金計算用の発電量計測値の提供などを日本ユニシスに委託。山田次長は、「将来的に自己託送制度を活用するうえでも、余剰電力の予測は重要だ」と強調する。

同社は、太陽光発電のEPC(設計・調達・建設)事業を展開しており、メガソーラーを中心にこれまで100MW規模の施工実績がある。21年よりPPAモデルを展開し、この他に全量消費型のPPA案件を2件導入する予定だ。今後は屋根面積が広く、電力消費の少ない物流施設や工場に絞って同モデルを展開していく構えだ。山田次長は「メインは新電力事業。PPAは付帯サービスとして展開しつつ、環境価値付きの電力を確保して最大限活用する」と意気込む。

自社のみならずサプライチェーン全体で脱炭素を目指す取り組みが広がるなか、電力消費者がグループ全体で環境価値を融通できる余剰電力活用型オンサイトPPAの仕組みは新電力会社にとって新たな事業モデルとなるかもしれない。

PPA余剰電力活用モデル導入予定のセンコーの物流施設屋根

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