[特別対談 第31回]

自家消費新時代のPCS

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。今回のお相手は、ダイヤモンド電機の傘下に入って再起を図るPCSメーカー、田淵電機の坂本幸隆執行役員である。自家消費新時代のPCSについて意見交換した。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち)1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

土肥氏●昨年、貴社の経営が厳しい状況にあった頃、私の周りには根強い〝田淵ファン〞の方が多くいらっしゃって、皆さん貴社の再建を願っていました。まだ様々な経営課題が残っておられるのでしょうが、新体制のもと再始動されたので、今日は貴社の新たなビジョンなども含め、自家消費新時代のPCS(パワーコンディショナ)というテーマでお話をお伺いできればと思います。

坂本氏●はい。ただ最初に、皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしましたこと、この場をお借りしてお詫び申し上げるとともに、当社の経営問題に対して、経緯を報告させていただきます。

ご承知のとおり、当社は昨年資金繰りに行き詰まり、2018年6月25日に事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請しました。中長期の再建計画を立て、取引金融機関には借入金返済の一時停止をお願いし、19年1月22日にはダイヤモンド電機より30億円の資本注入をいただくことで再建の道筋が得られました。そして取引銀行から約49.5億円の債権免除と返済条件変更の支援を受け、これをもって事業再生ADRが成立しました。

その後、固定費の削減に取り組み、今年1月には90人弱の希望退職者を募ったほか、米国田淵電機は、アフターサービスの体制を残し、4月末に全社員を解雇。田淵電機本社からのサポート体制としました。昨年7月に400人いた社員は、現在約250人まで減っています。

土肥氏●再スタートを切られてから、PCSの販売はどのような状況ですか。

坂本氏●住宅向けの主力商品は、出力5.5kWのハイブリッド型PCSと蓄電容量4kWhの蓄電池で構成されるハイブリッド蓄電設備です。18年上期の販売数は月50〜100台でしたが、下期には月250〜500台に増えました。昨年の台風で停電になった時に当社の設備を利用された方がおられて、非常用のメリットが口コミで広がり、販売につながったようです。

一方、低圧太陽光発電所や自家消費向けの三相9.9kW機の販売は、前年比20%増の月1000台と好調ですが、逆に品薄状態でお客様に迷惑をおかけしている状況です。海外製PCSのセンドバック方式に不満をもたれている方もいらっしゃるようで、当社のPCSに切り替えられるケースもありました。