[特別対談 第32回]

住宅用エネルギー設備の本質

サンテックスマートエコリビング 山川敦司社長×ESI 土肥宏吉社長

プロフィール●山川敦司(やまかわ・あつし)1973年大阪府生まれ。96年大阪経済大学大学卒業後、商社勤務を経て、2002年日本エコシステムに入社、04年取締役に就任。営業本部長や事業推進部長などを兼務し、16年より取締役事業推進部長。17年10月サンテックパワージャパンに入社し、19年1月より現職。

土肥氏●販売会社さんのなかには、蓄電設備をうまく販売しておられるところもありますが、販売に苦戦されておられるところもあって、二極化しているように思います。蓄電設備の販売に関してはどのように見ていらっしゃいますか。

山川氏●販売会社さんは、太陽光発電設備と蓄電設備のセット販売で利益額を増やされたいのですが、現場の営業マンは太陽光単体の方が売りやすいし、エンドユーザーの経済メリットも、太陽光単体購入の方が蓄電設備も含めたセット購入よりも費用対効果が大きいのです。

ですから、蓄電設備の価格は早い段階で下げていく必要があるでしょう。それによって、お客様のメリットが増えれば、営業マンが提案しやすくなり、販売数量が伸びてマーケットは拡大します。その結果、販売会社さんの事業性も向上するはずです。

土肥氏●最近は自然災害が多発し、停電が長期化する事態が頻発しています。これを受けて、法人のお客様からは「自家消費率を高めたい」、「非常時の自立運転機能を高めてほしい」といった要望をいただくようになったのですが、住宅用においては変化ありますか。自立運転モードのニーズが徐々に高まっていくようにも思いますが。

山川氏●蓄電設備も含めて非常用のニーズは高まっていますが、それがエンドユーザーの一番の購買動機になっているかと言われれば、残念ながら、まだそのような印象はありません。ただ、いつの日か非常用のニーズが購買動機の新たな柱になるかもしれません。我々は、エンドユーザーの方々が太陽光発電設備や蓄電設備を求めて買いに来る状況を創り出さなければと思っています。

土肥氏●もしパワーコンディショナに自立運転機能を義務づけ、停電時に近隣住民に電力解放していたら、どうなっていただろうか、と考える時があります。

仮にもこのような規定が最初からあったならば、いま各地で起こっている太陽光発電所に対する地域住民の反対運動は起こらなかったように思うのです。

実は、去年の北海道地震の際、偶然にも出張で北海道におりまして、ある販売会社さんが、低圧太陽光発電所を自立運転モードに切り替えて、近隣の住民の方々に電力を無償で提供されている場面に出くわしました。皆さん電力のありがたみを実感されたようで、太陽光発電設備を重宝していましたが、一方で帯広のメガソーラー銀座が非常時の電源としては全く機能していなかったのです。

山川氏●やはり太陽光発電設備も蓄電設備も、エネルギー供給設備ですから、経済性はもちろんですが、非常用電源としての機能を失ってはならないし、むしろそこに本質的な価値があるのかもしれませんね。

土肥氏●おっしゃる通りです。ただ、FITの売電単価が下落し、自家消費利用が普及すれば、徐々にその本質的な価値が認知されていくようにも思います。そして減災・防災の向上に太陽光発電設備や蓄電設備が貢献しているということになれば、その時こそ、エンドユーザーから求められる商品となり、住宅用エネルギー市場は健全な成長を遂げるはずです。

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