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電力システム改革が、安価な再エネ電源を普及させる

東京大学社会科学研究所 松村敏弘 教授

「2013年から3年程度、再生可能エネルギーの導入を最大限加速させる」──。4月11日、エネルギー基本計画が閣議決定された。だが、導入を後押しするはずの固定価格買取り制度は、始動から3年目にして制度設計の変更をよぎなくされる事態に。回避可能費用、買取り制度はどうなるのか。エネルギー政策に詳しい松村敏弘東京大学教授に聞いた。

回避可能原価がどうなっても、電気料金は変わらない。国民負担は変わらないという考え方は、電力コストと電気料金が等しいという前提があって、初めて成り立つ議論です。

いまの家庭用電気料金は地域独占、規制料金ですから原価積み上げ方式で算定される。回避可能原価を高くすると賦課金は低くなっても、電力原価が上がるため電気料金が上昇し、結果的に国民負担は変わらない。

この主張は電力原価と料金が等しくなければ成立しない。現状の電気料金制度とは値下げ届出制です。この値下げ届出制の世界では、東日本大震災まで値上げ申請されることがなかった。従って、料金と原価が本当に等しいのか。10年以上の間、一度も第三者によって確認されることがなかったわけです。

しかし、震災後の値上げ申請の過程で、どう考えても低廉で安定的な電力供給のために必要不可欠なコストとは思えないようなものが、一杯入っていたということが次々に明らかになった。

この現状を踏まえてもなお、コストと等しい電気料金に設定されていると思っているとすれば、あまりにも能天気で。回避可能原価を過小にし、電力会社に利益を生むような状況になっていたとしても、なお国民負担は変わらないなどという発言は、無責任極まりないと思っています。

全電源平均の可変費用などという、どう考えても理屈の合わない制度をつくって、回避可能原価を過小にすることによって、ウインドフォールゲイン、濡れ手に粟の利益を一般電気事業者に与えてしまう。現実の電気料金がどうなっているのか、まったく解っていない人が制度設計をしていたことは、国民にとって不幸でしかなかった。

電力会社はこれまでウインドフォールゲインを馬鹿みたいに蓄え、電力の安定供給と関係ないところに使ってきたんじゃないのか。だったら、回避可能原価が上がってもかぶれと。ムダを削ぎ落して、本当にこれが適正なコストだと自信のある段階になって、値上げ申請をすれば良い。

ただ制度が変わっても、電力会社は値上げ申請をしないと思います。彼らのコストなんてジャブジャブですから、回避可能費用で増えるコストなど遥かに小さい。逆にそんなことしたらやぶ蛇になるだけです。

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