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ループ、28年度年商1000億円標榜

中村氏CEOに復帰

新電力会社のループは経営戦略説明会を開き、2028年度に電力小売りの契約数100万件、売上高1000億円を目指す方針を示した。電力小売りを強化しつつ、再エネ電源や系統用蓄電所の開発を加速させる構えだ。(本誌・楓崇志)

ループ(=Looop、東京都台東区、中村創一郎社長)は2025年7月17日、経営戦略発表会を開催。28年度に電力小売りの契約数を現在の34万件から100万件まで増やし、売上高1000億円、売上総利益223億円を達成させるという目標を公表した。直近の25年3月期の売上高が505億円、売上総利益が95億円だから、4年で約2倍の成長を遂げ、株式上場も視野に入れる考えである。

同社は目標の実現に向けて、3つの注力分野を設定した。スマートホーム事業への参入などを含めた電力小売り事業の強化と、発電所から住宅までを管理・制御できるデジタルプラットフォームの開発、そして再生可能エネルギー電源と系統用蓄電所の開発・保有量の拡大である。

再エネ電源は現在約100MWの太陽光発電所や風力発電所を保有しているが、「早期に1GWまで伸ばしたい。新設だけでなく、中古発電所の取得も検討していく」(中村創一郎社長)。

一方、系統用蓄電事業では25年2月に埼玉県小川町で第1号案件となる高圧蓄電所を稼働させた。運用業務を内製化する傍ら、25年5月には三菱電機と台湾の泓德能源科技(HDRE)が立ち上げたアグリゲータに資本参加するなど、着実に事業領域を拡げつつある。ただ、具体的な開発目標については「政府の方針なども見極めながら検討を進めている」(中村社長)というにとどめた。

同社は今回の戦略発表に先立ち、役員人事を発表。創業者で大株主の中村氏が25年6月27日付で社長CEOに返り咲いた。

中村社長は、「(社長を退任してから)約2年間、視察を兼ねてドバイやケニア、キルギスなど世界30ヵ国を旅してきたが、必ずしも日本が再エネ先進国ではないことが分かった。日本で再エネを軸とした社会を構築するためにもう一度、挑戦したい」と強調し、社長職に約2年3ヵ月、CEO職に約1年3ヵ月振りに復帰することを決めたという。なお、それまで社長CEOを務めていた森田卓巳氏は同日付で海外事業管掌の取締役執行役員に就任した。

同社は記者発表を開いた7月17日、出力抑制が発生しやすい昼間の対象時間帯に消費した電力に対し、料金を割引くという実証事業を東京電力管内で行うと発表。再エネの有効活用を目指し、一般消費者の行動変容を促すのが目的だ。中村社長は、「当社には30万件を超える電力小売りの顧客基盤があるだけでなく、アーリーアダプター(初期採用層)も多く、社会の変革に向けた実証事業にも取り組みやすい。これも我々の優位性の一つだ」と語る。

同社は創業こそ太陽光発電所の開発・販売だったが、16年に電力小売りに参入してからは売上規模の拡大とともに新電力会社としての色合いが濃くなった。ただ中村社長は、「再エネ電源の開発力やエンジニアリング力、運用の知見は当社の強みだ。それにそうした〝卒FIT〟を含む再エネ電源は電力小売りで活かすこともできる」という。再エネと電力小売りの融合が成長の鍵を握りそうだ。

同社は7月17日に経営戦略説明会を開催。中村創一郎社長らが出席した

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