會澤高圧コンクリート、電力をためられる〝蓄電コンクリート〟新開発
コンクリート製造の會澤高圧コンクリートが電力をためられる〝蓄電コンクリート〟を開発した。住宅用蓄電池として商用化したい考えだ。(本誌・中馬成美)

工業会の発足式の様子。燃料電池車の電力を供給して蓄電コンクリートの点灯式を行った
コンクリートメーカーの會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市、會澤祥弘社長)は、米・マサチューセッツ工科大学と電力をためられる〝蓄電コンクリート〟の商用化を進めている。炭素の微粒子、カーボンブラックをコンクリートに添加してコンクリートに電子導電性を持たせる技術を応用し、蓄電コンクリートを開発した。蓄電容量は1㎥あたり約300Whで、出力は100V相当だ。蓄電池モジュールを試作し、耐久性や充放電性能などを検証していく。2026年秋を目途に、住宅用の新商材として商品化したい考えだ。
蓄電池セルは、45cm角の電子伝導性を帯びた蓄電コンクリートでつくった正極電極、負極電極、そして電解液を含浸したセパレータからなる。セル1つの電圧は1Vだから、セルを25枚積層して25Vの蓄電池ユニットをつくり、蓄電ユニットを4基接続して蓄電池モジュールになる。同社の青木涼副社長は、「化学反応を利用しないため、安全性が高く、耐用年数は長い。半永久的に使える」と利点を語る。
ただ課題もあって、まずは価格低減だ。青木副社長は、「同じ電気容量で比べると、コンクリート製の蓄電池の価格はリチウムイオン蓄電池よりも高くなるだろう」と語る。
さらには、単位体積あたりのエネルギー密度の向上だ。現在は蓄電容量4kWhに対して実に13㎥に及ぶ蓄電コンクリートが必要で、1辺が約2.4mとすれば、住宅向けには現実的な大きさではない。ただ、青木副社長によれば、1㎥あたりの蓄電容量を現行300Whから2.2kWhまで高められる可能性もある」。実現すれば、蓄電コンクリートを2~3㎥に抑えられるため、実用化も見えてくるだろう。
同社は、住宅用商材として蓄電池モジュールを床下の空洞部分に設置する想定だ。蓄電コンクリートは金型に依然する規格量生産ではなく、用途や使用箇所に合わせて大きさや形状を自由に設計できるようにする。多様なデザインに対応するため、3Dプリンターを活用する。ベンチやモニュメントに蓄電コンクリートを使うことも検討していく。
25年8月には東京都のGX関連の支援事業に採択され、向こう2年で総額2億円の支援を受けることが決まった。9月25日には全国45社のコンクリート関連企業からなる『蓄電コンクリート工業会』を発足。蓄電コンクリートの製品開発や企画開発を進めつつ、全国的な量産体制の構築を目指す構えだ。

戸建住宅向け蓄電コンクリートのイメージ図




