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日立、自己託送向けEMS開発

実証開始へ

同社カーボンニュートラル事業部フロントエンジニアリング部の佐野賢治部長

日立製作所は2022年10月19日、EMS(エネルギー管理システム)技術を活用した自己託送を始めると発表した。事業所の脱炭素化を進めつつ、EMSの実証実験を重ね、先々は他社への販売に繋げたい考えだ。

同社は、AI(人工知能)と監視制御装置を組み合わせたEMSを開発した。気候・日射データと発電データをAIで照合しながら発電予測の誤差を埋めつつ、需給計画を30分毎に発電側・需要側の双方で補正することで計画値の精度を高めていく仕組みだ。

同社は24年3月から約15年間、EMSを用いた自己託送の実証事業を2拠点で実施する。実証事業では、太陽光発電設備と蓄電設備の劣化診断も行う。太陽光発電設備の発電量と蓄電設備の充放電量をそれぞれ予測し、計画値を立てたうえで実績値との比較から劣化具合を予測する。

同社エネルギービジネスユニットエネルギーソリューション事業統括本部カーボンニュートラル事業部フロントエンジニアリング部の佐野賢治部長は、「自己託送の利用は増えたが、インバランスリスクを回避するため、発電計画を甘めに設定し、その分出力を抑制しているという現状がある。この課題を解消するため、長期間の実証試験を計画した」と語る。

同社は、埼玉県鳩山町内の研究施設内に直流出力約2~3MWの太陽光発電設備と蓄電容量約2000~3000kWhの蓄電設備を新設。設備が生み出す約90%の再生可能エネルギー電力を東京都国分寺市内の自社研究施設に託送し、残りを鳩山町の研究施設で自家消費する実証試験を始める計画だ。

佐野部長は、「まずは社内で検証し、精度の高い需給管理法を構築する」と語る。

同社は、脱炭素化の実現に向け、環境長期目標『日立環境イノベーション2050』を策定し、自社の事業所のカーボンニュートラル(炭素中立)を30年度までに達成するという目標を掲げた。今回の実証事業で国分寺の研究施設の二酸化炭素排出量を30年度までに10年度比75%削減できると見込んでいる。

太陽光発電設備と蓄電設備を新設する埼玉県鳩山町内の研究施設

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