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大林組、技術研究所でスマートエネルギーシステム完成

250人で取り組むピークシフト

ゼネコン大手大林組(東京都港区、白石達社長)の技術研究所で、太陽光発電を用いたスマートエネルギーシステムが2月に完成した。施設内の電力消費を制御し、外部から購入する電力を削減する。実証試験を重ねてシステムを商用化する狙いだ。

東京都清瀬市に位置する同研究所では、建築に関する様々な実験を行っている。耐震テストや過酷気象の再現実験では、多くの電力を使用するため、施設内のピーク時の電力需要は1000kWから2000kW以上に増えることもある。そこでピーク電力を削減できる同システムを導入した。

システムを構成する発電設備は、6つの施設に設置した出力計820kWの太陽光発電システムと、出力500kW、蓄電容量3000kWhのレドックスフロー蓄電池、そして出力457kWのマイクロコンバインド発電機の3種類。全ての施設を通信で繋ぎ、発電設備からの電力と商用電力、そして施設内の電力消費を管理できるようにした。電力消費を太陽光発電で賄えない時間帯は、マイクロコンバインド発電機が稼働する。蓄電池も自動で充放電する仕組みだ。

電力需給がひっ迫すると、研究所内の250名の社員にメールでアラートが送られる。社員は業務に支障のない範囲で実験内容を変更するなどしてピークシフトを試みる。間接部門は、空調設備の温度調整や照明を消して節電に貢献する。

電力の需給予測や最適制御、見える化などのエネルギー管理システムは、大林組がプラットフォームを作成し、NECと三菱電機がシステムを構築した。

今後はシステムを運用して、ピーク電力を3割削減し、年間の電力消費量を2割削減、さらに非常時でも50名が7日間業務できる体制を築く。すでにピーク電力の3割削減は実現しており、3月27日に契約電力を2500kWから1700kWに減らす手続きを終えた。基本電力料金は年間約1600万円削減される。

ただ、マイクロコンバインド発電機や蓄電池などの導入コストが嵩み、投資回収は難しいようだ。

技術本部の小野島一環境ソリューション部長は、「社員のエネルギーに対する意識を高める狙いもある。2月からデマンドレスポンスを始めたが、様々な課題が浮上した。それらを解決し、システムの商用化に繋げたい」と話す。

企業の敷地内の電力融通をはじめ、駅周辺の再開発や街全体の電力コントロールへの応用を目指す構えだ。

「電力小売りが始まると、地方に小さい電力会社ができるでしょう。ただ一般電力会社と違って発電設備は豊富にない。エネルギーの最適化や融通するシステムが必須になる。そのときにこのシステムが活かされる」(小野島部長)。

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