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東急パワーサプライ、住宅用蓄電池の充放電制御の大規模実証開始

都内の戸建住宅に1000台無償配布

東急パワーサプライは住宅用蓄電設備を用いた大規模実証『てるまるでんちプロジェクト』を始める

東急子会社で電力小売りの東急パワーサプライ(東京都世田谷区、村井健二社長)は2025年8月28日、東京都内の1000件の戸建住宅に住宅用蓄電設備を無償配布し、充放電制御する実証事業を始めると発表した。蓄電池を各世帯の電気代削減に役立てるほか、群制御で都市のレジリエンス(強靭性)向上に役立てたい考えだ。

同社は東京都内の1000件の戸建住宅に第三者所有方式で住宅用蓄電設備を設置する。利用者への貸与期間は約10年で、設置した蓄電設備の充放電制御も同社が実施していく。

利用者は蓄電設備の設置費だけでなく、貸与期間中の設備利用料も発生しない。停電時などに蓄電設備に充電していた電力を使えるほか、貸与期間終了後には蓄電設備を無償で譲受することができる。ただし、蓄電設備の充放電制御による電気代の削減効果を高めるため、東急パワーサプライの市場連動型の電力料金プランに加入する必要がある。

実際の蓄電設備の充放電制御では、停電時などに備えるために一定容量を残しつつ、市場価格の安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電していく。東京都の『アグリゲーションビジネス実装事業』にも参画するため、束ねた住宅用蓄電設備を電力需給の逼迫時の調整力としても活用する方針だ。

今回の実証事業では、蓄電設備が設置し難い住宅への普及拡大を目的としており、太陽光発電設備やエネファームなどの発電設備が設置されていない戸建住宅を対象とした。オムロンソーシアルソリューションズ製の単機能型蓄電設備を採用し、先着順で都内の戸建住宅1000世帯を募集する。

実施にあたっては設置費の一部に東京都の補助金を活用する予定ではあるものの、完全無償設置の仕組みでもあるゆえに必ずしも収益化を見込んでいるわけではないようだ。東急パワーサプライのプロジェクト責任者の冨山晶大氏は、「将来的には調整力市場での収益が期待できるかもしれないが、現時点ではそこまで織り込んでいない。それ以上に今回の実証事業は東急グループとしての街づくりやレジリエンス強化などへの貢献が目的だ」と強調する。

もっとも、26年度からは住宅用蓄電設備などの低圧リソースが需給調整市場に参画できるようになる。住宅用蓄電設備のさらなる普及に向けた重要な実証事業になるかもしれない。

実証ではオムロンソーシアルソリューションズ製の単機能型蓄電設備を採用する。蓄電容量は12.7kWh

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