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直流アーク検出・遮断に関するJIS制定

太陽光の安全性向上へ

太陽光発電設備の発火事故の原因となり得る直流アーク放電において、その検出・遮断技術に関するJIS(日本産業規格)が2025年11月20日に発行された。太陽光発電設備の安全利用に繋げたいところだ。

このほど制定された『JIS C 63027』は、太陽光発電設備の直流部で発生する直流アークの検出と遮断機能を評価するための性能試験方法を規定したものである。23年に国際電気標準会議(IEC)が太陽光発電設備の直流アークの検出と遮断に関する国際規格『IEC63027』を発行しており、それを日本の規格に落とし込んだのが今回のJISである。

直流アーク放電とは、ケーブルやコネクタといった電気配線の断線や劣化、太陽光パネル内部の接触不良などが原因で発生する現象で、直流ゆえ遮断が難しく、高温化しやすい。適切に処置しなければ、直流アークが周辺部材に燃え移り、火災を引き起こす恐れがあるのだ。

対策の一つが、直流アークを検出・遮断する技術だ。JISを制定した日本電機工業会の特別分科会委員会の主査を務めた大阪電気通信大学工学部電気電子工学科の濱田俊之教授は、「直流アークの検出・遮断技術は火災リスクを低減できるものだが、国内にはそれを評価する技術規格がなかった。建物設置の太陽光発電設備が普及するなか、今回のJISが安全性向上に繋がると期待したい」と語る。

具体的にJISに定められたのは、直流アークの発生後2.5秒以内またはエネルギーが750Jに達する前に検出あるいは検出と遮断を行う技術に関する性能や試験条件、評価方法などである。PCS(パワーコンディショナ)に搭載しているアーク検出・遮断機能や単独のアーク検出・遮断器などの基準となる規格だ。すでに一部のPCSに実装されている機能でもある。

とはいえ、現状はJISが発行されたに過ぎない。行政による補助事業の要件や各種ガイドライン、電気設備の技術基準などに盛り込まれなければ、今回のJISの活用の場は限られるだろう。太陽光発電の安全性向上を推進しているMLPE推進協議会の難波圭一代表は、「太陽光発電設備の安全性を高めていくうえで今回のJISの制定は重要な一歩だ。まずは災害時の避難場所となるコンビニエンスストアや公共施設などへの太陽光発電設備の導入時に活用するべきではないか」と話す。

また、今回のJISでは、直流アーク放電のうち、直列アーク放電のみを対象とし、並列アークや地絡アーク対策は考慮されていない。濱田教授は、「太陽光パネル単位での遮断技術はそれらの対策の一つとなり得る」としたうえで、「直流アークの検出・遮断技術だけでなく、発生を低減される取り組みも重要だ」と説く。安全性を高めるうえでは、適切な部材選定や設計・施工、点検を含めたO&M(管理・保守)の実施も忘れてはならない要素なのだ。

ともあれ、現在国内に流通する全てのPCSに直流アークの検出・遮断機能が搭載されているわけではなく、単独の検出・遮断器もそれほど多くない。JIS制定で技術への注目度が高まりそうだ。

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