太陽光パネル税、またも見送り

2020.01.06

PVeye

 岡山県美作市が導入を検討している太陽光パネル税。12月の議会でまたもや見送りとなった。争点は税金の使い道となりそうだ。(本誌・岡田浩一)

 太陽光パネル税とは、太陽光パネルの設置面積に応じて太陽光発電事業者に課税するもので、条例により新設できる法定外目的税だ。
 ことの発端は、美作市で、太陽光発電所が多数建設されることに対し、一部の市民から環境破壊や災害誘発につながるとの不安の声が挙がったこと。そこで市は、同税を導入すべく、条例案をまとめて議会へ提出したが、今年6月、9月の議会では「議論が深まっていない」などの理由から立て続けに継続審査となった。背景には、納税義務を課せられる発電事業者からの質問に対する市の回答が遅れ、事業者の意見書作成が間に合わなかったことがある。
 そして迎えた12月の議会では資料が出揃い、本格的な議論が行われたが、「もう少し内容を精査したい」といった意見が出て、三度目の継続審査となった。市と事業者の意思疎通ができていないことは想像に難くない。
 この太陽光パネル税については否定的な意見も多い。自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟は、発電事業者や弁護士、経済産業省や総務省などの関係者を集めて繰り返し会議を開催し、同税の導入について議論してきた。12月6日の会議では、太陽光発電事業者連盟の専務理事を務める千葉エコ・エネルギーの馬上丈司社長が、「特定の発電方式のみを対象とするのはおかしい。電気事業の公正な競争を阻害する」と批判した。過去には弁護士から「太陽光発電事業者にはすでに法人税などが課されている。実質的な二重課税になるのではないか」との指摘もあった。
 それだけに、二重課税が同税導入にあたっての争点とも言われていたが、12月の再エネ議連の会合では、ある国会議員から「原子力発電にも法定外目的税がかけられており、先例がある。パネル税の導入に関しては、税金の使い道も争点になる」との意見も出ている。
 この税の使途について、市は「太陽光発電所の建設に起因する環境破壊や災害への対策費に充てる」としているが、そもそも、太陽光発電所の建設が自然災害を誘発しているのだろうか。仮にもそれを事実としてパネル税を導入するにしても、災害時におけるパネル税の使途の妥当性を示すうえで、太陽光発電所の建設と災害発生の因果関係を一定の根拠をもって証明しなければならないが、そのようなことができるのか。いずれにせよ、同税の導入については2020年以降も議会での検討が続く。
 ただ、今後の議論を経て、太陽光パネル税が導入されると、全国の自治体に波及し、日本の再生可能エネルギー普及が減速する状況を招きかねない。地域との共生なくして太陽光発電の未来はない。