ESI土肥社長が語る

非常電源としての太陽光のあるべき姿

千葉の大停電を踏まえ、非常用電源として太陽光発電設備はどうあるべきか。太陽光商社ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥社長が見解を述べた。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

千葉の大停電は、老朽化していた鉄塔が強風で倒れたことが原因とされていますが、私は大規模集中型の電力供給システムの弱点が改めて浮き彫りになったように思います。早急に対策を講じていくべきでしょう。

自然災害はもはや万が一ではなくなったのです。昨年は、台風で大阪や和歌山では1週間以上停電が続きましたし、その後の西日本豪雨では、関西、中四国、九州と、広範囲にわたって甚大な被害に見舞われました。さらには、北海道地震で全道ブラックアウトです。今年も福岡、佐賀で豪雨災害が発生しそして千葉の大停電が起こりました1年に2度、3度と大きな自然災害が発生しています。

いまや自然災害は想定外ではないので、防災・減災対策を念頭にインフラを整備していかなければならないように思います。その際、電力に関しては、やはり分散型電源の太陽光発電を活用していくべきでしょう。

昨年、私は偶然にも、北海道で地震が発生する前日から北海道に仕事で赴き、地震が発生した9月6日の未明は釧路のホテルに滞在していました。釧路は震源地から離れており、大きな揺れを感じず、大地震の発生に気がつかなかったのですが、朝になっても停電と断水が続いており、地震の発生を知るのです。

その後、販売・施工会社さんを訪問すると、自立運転への切り替え方をお客様に伝えて回っており、お客様は非常に喜んでいました。住宅用太陽光発電設備や蓄電設備は役に立ったのです。

ある販売・施工会社さんは、自社の敷地内に建てた出力20kW程度の低圧太陽光発電所を自立運転に切り替えて電源を確保し、近隣の方々にも電力を提供していました。集まった方々は携帯電話を充電したり、自宅から炊飯器を持ってきて米を炊いていたりして、太陽光発電をとても重宝していました。

千葉の大停電でも、住宅用太陽光発電設備や蓄電設備は非常用電源として活躍したようですが、気になるのはメガソーラーなどの地上設置型の太陽光発電所です。恐らく今回もほとんど貢献していないはずです。

実際、北海道地震の時は、帯広にメガソーラーがたくさんあって、地震で壊れた設備はほとんどなかったにもかかわらず、機能していませんでした。太陽が照れば、太陽光パネルは発電する能力を備えますが、停電時はPCS(パワーコンディショナ)が停止しますからどの道売電できないのです。ならば、住宅用太陽光発電設備のようにPCSの設定で自立運転に切り替えられるようにして、非常時の電力供給設備として活用してもよいはずです。

この課題を解決するためには、制度面の改定や設備の変更などが伴い、容易ではないのでしょうが、この課題解決に向け、太陽光発電業界は働きかけるべきだと思います。非常時に地域住民に電力を開放するメガソーラーが登場し、実際に活躍した事例が紹介されれば、あるいは、いま各地で起こっている太陽光発電所の建設反対運動も沈静化するのではないでしょうか。

さらに、防災・減災の観点でいえば、マイクログリッド化を進めていくべきでしょう。太陽光発電設備や蓄電設備、あるいはEV(電気自動車)まで総動員して、地域のコミュニティで電力の自給自足を実現するのです。平時も再生可能エネルギーで電力を賄えば、地域内の電力コストは安く抑えられますし、それまで外部から購入していた電力代を地域内で還流できるので、地域経済の発展に繋がります。

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