ESI（ヨーロッパ・ソーラー・イノベーション）が運営する自家消費用太陽光発電設備のシミュレーションツールを利用する企業が増えている。シミュレーションの精度が高いうえ、誰もが簡単に使える利便性が好評なのだ。早速手順を解説しよう。

まず、サイト上のグーグルマップに住所を入力して太陽光パネルを置く施設を表示し、屋根や敷地の形状をなぞってパネルの設置場所を指定しよう。工場や倉庫の屋根のほか、駐車場などの敷地まで、1エリア5ヵ所の設置場所を同時に指定できるから便利だ。

発電量の試算であれば、作業はこれで終わり。NEDO（新エネルギー・産業技術総合開発機構）の日照データが自動的に読み込まれ、発電量が算出される。

精度高く発電量を算出したい場合は、パネルの方位角や傾斜角、劣化率のほか、PCS（パワーコンディショナ）の出力や変換効率まで指定しよう。特に、屋根上設置の場合、パネルの傾斜角は0.1度単位、方位角は1度単位で細かく指定することができるため、これを活用してより精度高く発電量を試算するとよい。パネルの種類や方位角、傾斜角を変えれば、連動して発電量が変わるため、レイアウトの変更による発電量の比較検討も簡単に行える。

自家消費の効果を求めたい場合は、電力消費量を入力しよう。サイト上に、30分単位、もしくは60分単位の電力消費量のCSVデータをアップロードすればよいのであるが、仮にデータがなくても、概算で試算できるのがこのサイトの優れたところ。施設のタイプを、事務所や工場、倉庫、病院、スーパー・ドラッグストア、コンビニエンスストア、自治体役所、住宅などから選択すると、電力使用状況のアルゴリズムをもとに電力消費量が自動で入力される。

むろん、電力消費量データはたとえ1ヵ月分でもないよりはある方がよい。アルゴリズムの精度が向上しており、1ヵ月分のデータだけでも年間の電力消費量を精度高く予測できるのだ。細かくシミュレーションしたければ、稼働時間や休日、長期休暇のほか、フロア数や出力自動追従システムの有無まで設定しよう。

そして、発電量と電力消費量を求めれば終了だ。電力使用量と電力系統から購入する電力量のほか、太陽光発電電力量、自家消費電力量、余剰電力量に自家消費率もサイト上で確認でき、設備の導入による電力代の削減効果や二酸化炭素削減効果、設備導入の費用対効果まで、自動で算出されるのである。

もっとも、自家消費用の設備やオンサイトPPA（電力売買契約）用の設備の設計は複雑で、正解は一つではない。業者によって設計の内容は異なり、顧客は頭を悩ますわけだ。それだけに、いまでは自家消費提案に力を入れるEPC（設計・調達・建設）企業はもとより、太陽光発電設備を導入する『RE100』加盟企業のほか、地域脱炭素化を進める地方自治体の関係者なども、ESIの自家消費シミュレーションツールに関心を持ち始めている。今後は、地方自治体による太陽光発電のポテンシャル調査などに活用される場面もあることだろう。

もちろん、設計に精通した者にとっても利用価値は高い。太陽光パネルであれば、出力数や片面発電タイプ、両面発電タイプなどを、PCSは、出力数や単相、三相、自立運転機能の有無などを指定すれば、条件に合った製品が表示され、推奨する設備まで提示してくれる。そればかりか、パネルとPCSの最適な組み合わせや特定のPCSに対して指定したパネルの最大直列数や最大並列数まで算出してくれるのだ。

データは豊富。太陽光パネルは、トリナやJAソーラー、ジンコ、ロンジ、カナディアン・ソーラー、ハンファQセルズからシャープまで国内外780種類。PCSは、ダイヤゼブラ電機やオムロン、山洋電気、安川電機、パナソニックなどの日本製からファーウェイやサングロウ、SMAなどの海外製まで250種類以上もある。このほか、蓄電設備や遠隔監視装置、出力制御装置、トランス、キュービクル、電気自動車用充電器から自然災害補償まで網羅されており、在庫状況も即座に確認できる。

機器には、製品カタログやユーザーマニュアルが用意されており、サイト上で閲覧できるから便利だ。サイト利用料は、企業アカウントが月額5万円、12ヵ月で年間60万円と求めやすい価格帯である。これを活用しない手はない。