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水上メガソーラーで火災 設備破損が発火原因か

9月9日、千葉県市原市の山倉ダムに設置された水上メガソーラーで火災事故が発生した。台風の影響で太陽光パネルが破損したことが原因とみられる。

鎮火後の様子。断線したケーブルが水中に浸かっていると感電する恐れがあるため注意が必要

市原市消防局に水上メガソーラーで火災が発生していると通報が入ったのは9日13時。消防隊が駆けつけて消火活動を開始し、鎮火したのは17時過ぎだった。けが人などは出ていない。

事故の詳細は明らかになっていないが、強風で水上フロートの一部が折り重なり、太陽光パネルが破損したことが原因とみられる。

ある材料メーカーの担当者は「パネル内の封止材は、酸素があれば一定以上の温度で燃えるし、ポリエチレンも同様だ」と説明する。

つまり、太陽光パネルが破損してパネル内部の抵抗値が上昇し発熱、そこに酸素が流入して封止材やバックシートが発火したというのがひとつ。もうひとつは、パネルのケーブルが断線し、地絡電流が漏れ続け、ケーブルやフロート素材のポリエチレンの発火温度を超えたという想定だ。

いずれにせよ、太陽光パネルの破損が火種とみられるが、地上設置型で使用される鉄やアルミの架台であれば、火災には至らなかった可能性もある。フロート素材を用いる水上太陽光発電所の安全対策を講じるうえでも細かい検証が必要だ。

一方、水質への二次被害について、同担当者は「封止材やポリエチレンが燃えたから水質に影響が出るとは考えにくい。ただフッ素などの添加物が混合されていたならば話は別だ」と話す。

18日時点で太陽光パネルや水上フロートは撤去されておらず、検証も始まっていない。同消防局火災予防課の担当者は、「原因や水質への影響は今後、水上から設備を引き上げた後で検証していく」と話す。

今回火災した水上メガソーラーは2018年3月に稼働し、出力は約13.7MWで日本最大だ。発電事業者は東京センチュリーと京セラの合弁会社で、京セラ製の太陽光パネルと仏シエル・テール製水上フロートを使用している。施工・設計は京セラコミュニケーションシステムが担当した。

京セラ広報部は、「現在発電事業は停止している。事業を継続するかは検討中だ」とし、「少なくとも、国土交通省が定めている市原市の基準風速38m/sに耐える設計にしていた」と話す。

9日、市原市では観測史上最大の風速33.9m/sを記録した。観測地点と山倉ダムは離れているため、現地の風速は判明していない。

太陽光発電に詳しい日本大学電気工学科の西川省吾教授は「JIS基準に準じて設計されているはずだが、問題なのはJISが陸上設置しか対応していないこと。水上は波打つ分、暴風時にフロートにかかる荷重が陸上より大きい。風力係数も水上や斜面への設置に対応していないので、これは業界全体の課題だ」と説明する。

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