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台風19号被害甚大

示された分散電源の価値

東日本を中心に猛威を振るった台風19号。数多の河川が氾濫し、住宅の浸水被害は5.3万棟を超えた。被災地へ入り、太陽光発電設備の被害と活用事例を追った。

長野市内の被災地は、泥と砂ぼこりに包まれていた

10月12日夜、伊豆半島に上陸した台風19号は、東北、関東、中部の各地に甚大な被害をもたらし、堤防の決壊は7県71河川、135ヵ所に及んだ。21日14時現在の総務省消防庁の発表によれば、死者数が70人、全壊・半壊住宅数は1986棟にのぼり、住宅の浸水被害は5万3093棟と、昨年の西日本豪雨による被害を超えている。

17日、千曲川が氾濫して広範囲に水没した長野市を訪れ、長野駅から国道18号線を北上した。次第に路上の赤土が目立ち、やがて沿道の泥土の量が一気に増すと、泥にヘドロや汚水が混ざっているのか、硫黄のような悪臭が鼻をつく。そう、ここは長野市豊野町、13日早朝に千曲川が決壊し、水没した地域だ。

同町内の店舗兼自宅で夫とパン屋を営む沼倉美代子さんは、「13日午前6時頃に避難所から様子を見に自宅に戻った時、水嵩は20㎝程だったが、あっという間に増水した」と当時の状況を語る。結局、沼倉さん宅は1階がほぼ冠水し、パン生地発酵機や冷蔵庫などが壊れてしまったのだが、「店員が片づけを手伝ってくれたり、近所の人が励ましてくれたり、本当にありがたい」と沼倉さん。気丈にも笑みを浮かべて話すのだ。

太陽光発電所の被害も多発した。静岡県伊東市では、斜面に設置されていた太陽光発電所が損傷し、作業員が飛散した太陽光パネルを回収していた。パネルや架台の桟と見られる金属材が積み上げられており、作業員は、「斜面の下側から風が吹き上げたらしい。辺りの樹木も倒れている」という。静岡県伊豆市では、華プランニング(静岡県長泉町、関富美江社長)が保有する太陽光発電所が台風による倒木でパネルが損傷。今回の台風によるものかは不明だが、地盤沈下も発生した様子だった。長野市内では、太陽光パネルまで冠水し泥に塗れた太陽光発電所が散見され、小屋や瓦礫を載せた発電所にも遭遇した。

住宅用太陽光発電設備も水害には弱いのかもしれない。静岡県函南町在住で、リフォーム中の自宅が浸水したという女性は、集電箱への浸水で太陽光発電設備が使えなくなったという。PCS(パワーコンディショナ)こそ水に浸からなかったようだが、「自立運転用のコンセントが下部にあり、冠水した。停電ならばともかく水害では使えない」と嘆息する。

強風で損壊したと見られる伊東市の太陽光発電所

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