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太陽光出力抑制に新ルール 対象拡大で代理抑制開始

太陽光発電の出力抑制に新ルールが追加される。抑制対象の発電設備が拡大し、オンラインの代理出力抑制が始まる。(本誌・岡田浩一)

2022年4月から太陽光発電の出力抑制に新たなルールが設けられた。かつての『30日ルール』下で建設された出力500kW未満の太陽光発電設備も出力抑制の対象となり、オンラインによる代理出力抑制が始まるのだ。

そもそも、12年7月のFIT開始時における出力抑制は、対象が500kW以上の発電設備に限られていたうえ、出力抑制は年間30日までとする上限が設けられていた。これを30日ルールというが、その後太陽光発電設備が増え、電力需給の維持が困難になると、経済産業省は15年1月、抑制の対象を住宅用太陽光発電設備も含めたすべての設備に拡げ、上限を年360時間とする『360時間ルール』へ移行しつつ、一部の地域では上限を撤廃し、電力会社が無制限・無補償に再生可能エネルギー発電所の出力を抑制できる『指定ルール』を導入した。

つまり、いまや新設の太陽光発電所は360時間ルールや指定ルールの下で出力は抑制されるわけだが、30日ルール下の500kW未満の設備のみ抑制の対象外だった。そこで経産省は今回、住宅用を除く30日ルール下の500kW未満設備も抑制の対象としたのだ。

この理由について、経産省は「FITを活用する発電事業者間の公平性を確保するため」としており、中部電力や四国電力は4月から、九州電力は12月以降、それぞれ出力抑制の対象を拡げる方針である。

そして、出力抑制の対象拡大に伴い、4月以降導入されるのが、オンライン代理出力抑制である。出力抑制の方法には、電力会社の指示を受けて発電事業者が手動で出力を止めるオフライン出力抑制と、インターネットを通じて電力会社が自動で設備を停止するオンライン出力抑制があるが、オンライン代理出力抑制とは、オンライン出力抑制が可能な事業者が、オフライン出力抑制しかできない事業者の代わりに設備を止め、後で清算する仕組みである。

丸一日設備を止めなければならないオフライン出力抑制に対し、オンライン出力抑制は昼間の数時間のみ止めるといった柔軟な抑制が可能なため、全体の抑制量を低減できるのだ。

代理出力抑制は当面、30日ルール下の500kW未満のオフライン設備に対して実施されるが、先々は500kW以上のオフライン設備にも行う計画で、九電は12月から取り入れる方向だ。

ただ、発電事業者にとって一長一短である。オフライン出力抑制の事業者は、新たに出力抑制対応機器を設置しなくて済むが、あくまでもオフライン出力抑制扱いとなる。抑制時間がオンライン出力抑制の事業者より長くなるようだ。

一方、市場では一部懸念の声がある。保険会社の出力抑制補償を活用する発電事業者の不正行為だ。代理出力抑制をした場合、後で相殺されるにも関わらず、設備を停止したことを理由に満額補償を受け取ろうと目論む事業者が出かねない。

ともあれ、4月から電力会社による出力抑制が増えている。これまで九電管内でのみ実施されてきたが、4月9日に四電管内で、10日に東北電力管内で、17日には中国電力管内で、それぞれ出力抑制が実施された。中部電力パワーグリッドも3月末に再エネの出力抑制を実施する可能性があると発表している。

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