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川崎市、住宅用太陽光の設置義務化検討へ

東京都に続き、神奈川県川崎市も住宅用太陽光発電設備の設置義務化の検討を始めた。早ければ2022年度内に条例を改正し、24年度に施行する見通しだ。地域脱炭素化の施策として全国に波及する可能性もありそうだ。(本誌・楓崇志)

川崎市が検討を始めたのは、建築物への太陽光発電など再生可能エネルギー設備の設置に関する義務制度の創設だ。すでに延床面積300㎡以上の建築主に設置義務を課している京都府・市や、住宅用を含む設置義務化を進めている東京都の事例を参考にしつつ、制度の詳細を議論している。

大小様々な建築物が対象となる制度だが、なかでも注目されているのが、住宅用太陽光発電設備の設置義務化である。対象となるのは、延床面積2000㎡未満の新築建築物で、東京都と同じく、建築主ではなく住宅供給事業者に義務を課す方向だ。

具体的な数値は審議会の答申や意見公募などを踏まえて決定することになるが、市内において2000㎡未満の新築建築物を年間5000㎡以上供給する事業者に対し、年間受注棟数に1棟当たりの義務量と設置可能率を乗じた値を設置義務量とする。義務対象になる事業者は市内約600社中23社程度で、年間受注数では約56%を占めるという。30年度までに新築建築物の6割に太陽光発電設備を設置するという国の目標とも整合する値だ。

いずれも詳細は東京都の制度案を踏襲する方針だ。川崎市環境局脱炭素戦略推進室の石塚博和担当課長は、「川崎市と東京都は立地が近く、同一の住宅供給事業者が両地域で事業を展開しているケースが少なくない。この状況下で川崎市が東京都と異なる制度にすると、事業者の負担が増えてしまいかねないので、東京都案を参考にしている」と話す。

それ以外にも川崎市は、延床面積2000㎡以上の新・増築建設物の建築主への再エネ設備の設置義務や、同10㎡以上の新・増築建築物の建築士に対する再エネ設備に関する説明義務も課す方針だ。

もっとも、川崎市は2020年2月に『ゼロカーボンシティ』を宣言し、同年11月に脱炭素戦略を策定。22年3月には同戦略をもとに地球温暖化対策推進基本計画を改定し、30年度までに温室効果ガス排出量を13年度比50%削減するとともに市内の再生可能エネルギーを330MWまで増やす目標を設定した。

20年度時点での再エネ導入量は200MWで残り130MWが必要だが、石塚担当課長は、「現在の政策だけでは65MW不足すると想定しており、目標達成には追加的措置が必要。その一つが建築物への設置義務化だ」と説明する。川崎市では23年度を目途に地域新電力会社の設立を計画し、地域電源開発のほか、PPA(電力売買契約)事業の実施も検討項目としている。設置義務化の後押しにもしたい考えだ。

住宅用太陽光発電設備の設置義務化に関しては、真偽が入り混じった情報がSNS(交流サイト)やメディアで飛び交い、否定的な意見も目立つ。丁寧かつ正しい情報発信が重要であることは言うまでもないが、先行する東京都が公表した意見公募の結果を見ると、50代と60代で反対意見が過半数を超えたのに対し、70台と40代以下では賛成が多数を占めた。なかでも30代は61%、20代は77%が賛成意見を投じたという。

建築物への太陽光発電設備の導入は脱炭素化の実現にとどまらず、防災力の強化や電力代高騰対策にもなり得る。全国に波及させるためにも先行する自治体への注目度は高い。

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