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環境省、脱炭素先行地域16ヵ所選定

3回目採択で計62ヵ所に

環境省は2023年4月28日、長野県生坂村や鳥取市、島根県松江市、高知県須崎市など16の地域を脱炭素先行地域に選定したと発表した。今回は3回目の採択で、脱炭素先行地域は62ヵ所となった。(本誌・土屋賢太)

環境省は、2030年までに民生部門の脱炭素化を目指す『脱炭素先行地域』を25年までに100ヵ所選び、〝脱炭素ドミノ〟による地域脱炭素化を狙う。採択した地域には、最大50億円の交付金を給付するため、申請する地域が増えており、23年2月7日から10日間の第3回公募では67の地方公共団体が計58件の事業計画を提出した。

環境省は3月から5回に亘って評価委員会を開き、審査したうえで、青森県佐井村や岩手県紫波町、福島県会津若松市、長野県小諸市、長野県生坂村、鳥取市、島根県松江市、高知県須崎市、高知県黒潮町など16の地域を脱炭素先行地域に選定した。今回は、「範囲・規模の大きさ・考え方」、「合意形成」、「再エネ設備導入の規模・確実性」、「事業性」、「地域経済循環への貢献」、「地域の将来ビジョン」、「先進性・モデル性」の7項目を重視しつつ、実現可能性を念頭に民間企業との共同提案を必須条件とした。

さらに環境省は、地域特性を活かす4つの『重点選定モデル』を新設し、今回はそのうち『施策間連携モデル』と『地域版GX(再エネ転換による社会経済の変革)モデル』という2つのモデルに該当する地域を選定した。施策間連携モデルとは、関係省庁の支援策を活用し、脱炭素事業と組み合わせる事業計画を指し、青森県佐井村や岩手県紫波町、福島県会津若松市、長野県小諸市、高知県黒潮町の事例が該当する。

一方の地域版GXモデルとは、地域の民間企業を主体に脱炭素化と経済発展の両立を図る取り組みのことで、長野県生坂村の事例が典型だろう。生坂村は、共同提案者と地域新電力会社を設立し、PPA(電力売買契約)方式で村内全域に再生可能エネルギー電力を供給する。具体的には、住宅や民間施設、公共施設の屋根上に出力計5MW分の太陽光発電設備を導入するほか、遊休地や農地に出力1MWの太陽光発電設備と蓄電容量1万640kWhの蓄電池を設置し、ブドウ圃場や加工施設、公共施設には自営線を敷設して小規模電力網(マイクログリッド)を構築する。これによって農業経営の安定化を図る計画である。

生坂村村づくり推進室の藤沢友宏室長は、「村の防災強化とともに、基幹産業である農業の経営安定化を図る提案が評価された」とし、「村内全域が脱炭素先行地域の対象で、範囲・規模の大きさや地域経済循環の担い手となる地元事業者の参画も評価された」と語る。

環境省大臣官房地域脱炭素事業推進課の犬丸淳課長は、「地域脱炭素化を他の自治体へ横展開するため、多用な事例を創る必要があった」としたうえで、「地域特性を活かす重点選定モデルに該当する事業計画には加点し、今後も優先的に選定していく」と方針を示した。

なお、環境省は、年2回のペースで今後も脱炭素先行地域を選定する。次回の公募は23年8月頃の開始を予定している。選定から実行の年にもしなければならないだろう。

生坂村はブドウ圃場などに営農用太陽光発電を導入したり、自営線を敷設してマイクログリッドを構築したりする計画だ。再エネ電力を活用して農業の経営安定化を図る

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