シゼンコネクト、電力大手ら8社と資本業務提携
低圧VPP事業に照準
自然電力子会社でEMS開発のシゼンコネクトはこのほど、電力大手ら8社と資本業務提携を締結した。調達した資金を人材確保や研究開発に活用しつつ、低圧VPP事業を視野にEMSの利用を拡げていく。(本誌・楓崇志)
シゼンコネクト(東京都中央区、松村宗和CEO)は2024年7月9日、JERA、四国電力、新日本空調、東急不動産、東京ガス、西日本鉄道、北陸電力、北海道電力の8社と資本業務提携を締結したと発表した。シゼンコネクトは提携先企業に新株予約権付社債を割り当てる形で資金を調達する。今回の資本業務提携とともに親会社の自然電力からの借入れも実施しており、調達額は約8.6億円に及ぶ。そのうち新株予約権付社債による調達額は3~4億円程度を占める模様で、新株予約権の行使は来夏を予定しているという。
シゼンコネクトはVPP(仮想発電所)や再生可能エネルギー発電業務、系統用蓄電所などで活用できるEMS(エネルギー管理システム)を開発する自然電力のグループ企業。系統用蓄電所向けでは運用業務代行の受託も手掛けている。
今回の資本業務提携では、調達した資金を人材確保や研究開発に投じつつ、同社のEMSを提携先企業と共同利用していく。具体的には、提携先企業が住宅用蓄電設備やEV(電気自動車)、系統用蓄電池といったVPPにも利用可能な機器の設置や所有を担い、シゼンコネクトがそれらの機器を独自のEMSで制御する。
同社の松村宗和CEOは、「中長期的なVPPの社会実装を見据えた関係強化の一環だ。エンジニアの採用などを進めながら、(1時間単位の同時同量を実現しつつ365日再エネ電力を供給する)『24/7カーボンフリー電力』の実現にも挑んでいきたい」と語る。
今回の提携は、26年4月から始まる予定の需給調整市場における低圧リソースの解禁を見据えたものでもある。住宅用蓄電設備やEV充電器、給湯設備などの低圧リソースをまとめて運用する低圧VPP事業の立ち上がりが期待されており、そのためにもEMSの開発とともに、運用できる低圧リソースを集めなければならない。そこで、顧客網や資本力を有する大手エネルギー会社などと提携することで、低圧リソースの確保を加速させるというわけだ。
松村CEOは、「当社の特徴の一つは制御対象となる機器がベンダーフリーであること。すでに多くの住宅用蓄電設備のクラウド制御に対応しているほか、今後はEVや給湯設備、空調機器などにも対応していくつもりだ」としたうえで、「27年度の黒字化、30年度に売上高100億円を目指す」と意気込む。