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積水化学、ペロブスカイト太陽電池の量産開始へ

900億円投じて27年に100MW体制に

積水化学工業がフィルム型ペロブスカイト太陽電池の量産化を決めた。2027年に年産100MW体制を築き、30年にはGW規模への拡張を目指す。国内パネルメーカーの復権に向けた勝負が始まりそうだ。(本誌・楓崇志)

積水化学工業は2024年12月26日、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の量産を開始すると発表した。大阪府堺市のシャープ本社工場棟を250億円で購入し、既存の建物や電源設備、冷却設備などを活用しつつ、ペロブスカイト太陽電池の製造設備を新設する。24年度内に新工場の建設に着工し、27年度内に年産100MW体制を構築する予定だ。その後は需要などに合わせて段階的に生産能力を引き上げ、30年度に1GW規模への拡張を目指すという。

24年12月25日には、経済産業省が『GXサプライチェーン構築支援事業』の第二回公募結果を公表、積水化学による年産1GW級のペロブスカイト太陽電池事業を採択したことを明かした。補助対象期間は24年11月から29年2月末までとし、1GW体制整備に向けた総事業費3145億円のうち、2分の1に当たる最大1572.5億円の補助金を交付する。今回の新工場の建設はその一環で、積水化学は建物購入費を含めた総投資額900億円の半分を補助金で賄う模様だ。

同社は、国の『グリーンイノベーション基金』を活用した研究開発を継続しており、25年度までに屋外耐久性を現状の10年から20年相当に伸ばしつつ、パネルの製造幅を現行の30cmから1mに拡大するという目標を設定している。それらを踏まえ、27年度に稼働する新工場には1m幅の製造設備を導入する予定だ。

ただし、ペロブスカイト太陽電池の製造・販売は25年度から始める。当面は年産10MW程度の現有設備を活用する方針で、まずは変換効率15%、屋外耐久性10年相当の30cm幅のパネルをロール・ツー・ロール法で製造していく。

フィルム型ペロブスカイト太陽電池の研究開発で先行する積水化学は、様々な企業と連携する形で実証試験を進め、かねてより25年の事業化を目標としていただけに、概ね計画通りに進んでいるようだ。

なお、同社は、ペロブスカイト太陽電池の事業化にあたり、製造・販売を担う新会社『積水ソーラーフィルム』を25年1月に立ち上げた。設立時は積水化学が86%、日本政策投資銀行が14%を出資したが、国が供給網を含めたペロブスカイト太陽電池の国内産業化を目指しているだけに、先々は部材や製造装置メーカー、施工会社などからの出資の受け入れも検討する構えである。

同社は発表当日の12月26日に記者会見を開催。加藤敬太社長(写真左)のほか、新たに設立する積水ソーラーフィルムの社長に就任する上脇太取締役専務執行役員(写真中央)と森田健晴PVプロジェクトヘッド(写真右、1月6日付で積水ソーラーフィルム取締役技術・開発部長に就任)も出席。中央にあるのが同社製のフィルム型ペロブスカイト太陽電池

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