鹿児島の蓄電池火災事故から1年超
いまだ復旧の目途立たず
鹿児島県内で起こった大型蓄電池の火災事故から1年以上経つが、いまだに復旧の目途が立っていないことが分かった。事業者には保険金が下りておらず、売電機会の損失額は4000万円以上になる模様だ。(本誌・土屋賢太)
鹿児島県伊佐市内の蓄電容量6400kWhの大型蓄電設備で火災事故が起きたのは2024年3月27日である。太陽光発電所に併設されていた韓・LG化学(現LGエナジーソリューション)製の三元系リチウムイオン蓄電設備から白煙が上がり、消火作業中に爆発し、全焼した。設備所有者のハヤシエネルギーシステムは火災保険に加入していたが、事故から1年以上経過した今もなお保険金が得られず、再稼働できずにいるのだ。
もっとも、同社の設備はFIT活用の太陽光発電所でありながら蓄電設備を併設した特殊なもので、ハヤシエネルギーシステムは夕方18時から24時までの間に系統に電力を流すという条件で九州電力と系統連系の契約を締結していた。つまり売電するには蓄電設備を設置しなければならないため、直流出力1.2MW、交流出力1MWの太陽光発電所は1年以上に亘って稼働停止の状態なのだ。36円のFIT売電案件だけに、機会損失だけでも4000万円以上にのぼるはずだ。
これについて、ハヤシエネルギーシステムの担当者は、「保険会社は、火災事故の原因が判明していないため、被害額を算出できず、保険金はまだ払えないというばかり。何のための保険なのか」と語気を強める。
ただ、経済産業省産業保安・安全グループ電力安全課は24年9月に公開した資料で、「最も激しく損傷していた第3区画4ラック目が火元となった可能性がある」としており、事故の原因こそ特定できなかったにしても、蓄電池から出火した可能性を指摘している。
一方、火災事故を調査してきた伊佐湧水消防組合は25年5月19日に蓄電池の内部短絡によって出火したことを判定したと発表した。さらに、蓄電池が過熱する過程で発生した可燃性の蒸気が建屋の中に滞留しており、そこに引火して爆発が生じたと推察している。
内部短絡に至った原因までは、セルの損傷が激しく、特定できなかったようだが、火災事故の原因分析としては十分な結果と言える。保険会社は早急に対応すべきであろう。
ともあれ、事故の調査がここまで長引いた背景には、LGエナジーソリューションの対応の悪さが関係したようだ。関係者らの証言をまとめると、LGは賠償責任を負うつもりはないという姿勢を崩さず、事故の調査や発火の原因分析には非協力的だったという。事実ならば、LGは、メーカーの責務や企業の社会的責任といった倫理観が欠落している企業と言わざるを得ない。そして恐らくこれほど倫理観のない国内メーカーは存在しないだろう。
ハヤシエネルギーシステムの担当者は、「保険が下れば、蓄電設備を設置して事業を再開する。値は張るものの、蓄電池は国内メーカーの製品を検討している」という。