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パシフィックコンサルら、同期化力や慣性力を持つインバータ開発

地域マイクログリッド事業向けに提供へ

建設コンサルタント大手のパシフィックコンサルタンツ(東京都千代田区、重永智之社長)は2022年5月9日、子会社のパシフィックパワーらと系統安定化に貢献できる同期化力や慣性力を有するインバータを開発したと発表した。まずはマイクログリッド(小規模電力網)内の太陽光発電用や蓄電池用に、EMS(エネルギー管理システム)とともに提供していく方針だ。

同社らが開発したインバータは、同期化力や慣性力を持つ『グリッド・フォーミング・インバータ』(GFMインバータ)と呼ばれるもので、環境省の実証事業として19年度から21年度にかけて開発。実証には両社のほか、環境エネルギー技術研究所、東芝、産業技術総合研究所が参加した。

そもそも火力発電など回転機を持つ従来電源は同期化力や慣性力で系統安定化に貢献しているが、現在の太陽光発電用PCS(パワーコンディショナ)のインバータには回転機がなく、同期化力や慣性力を有していない。再エネの普及に伴い、従来電源が減少して電力系統の同期化力や慣性力が低下し、系統安定化に支障が生じる恐れが懸念されており、国や関係機関は対応に向けた議論を進める。

その対応策の一つが太陽光発電用インバータに疑似的な同期化力や慣性力を持たせる手法であり、同社らがこのほど開発したGFMインバータなのだ。同製品を使うことで再エネの普及拡大が期待できる。同社らは産総研福島再生可能エネルギーセンター内の模擬マイクログリッドで実証し、オフグリッド下で内燃機関を持つ同期発電機と並列運転しても安定運用が可能なことなどを確認したという。

パシフィックコンサルタンツ社会イノベーション事業本部グリーン社会戦略部エネルギー事業化支援室の山下大樹課長補佐は、「通常の太陽光発電用や蓄電池用インバータは電流を制御する電流制御型だが、交流電圧を制御できる電圧制御型にしたうえで、同期化力や慣性力を発揮できるような制御方式を搭載した」と説明する。

低圧や高圧接続を想定し、GFMインバータの出力は20‌kW。山下課長補佐は、「今回搭載した制御方式は出力規模を問わない。別の出力帯のインバータにも実装可能だ」と話す。

現時点でも既存のPCSと置き換えれば、同期化力や慣性力を持つ電源になりそうだが、系統連系規定などの環境整備が進んでいないために系統接続は難しい。そこで、パシフィックパワー企画部の松田健士部長代理は、「まずは地域マイクログリッドなどから導入を始めたい」と語る。

同社グループは、自治体などと連携した地域マイクログリッド事業を積極的に展開している。今回の実証ではマイクログリッド内に設置したGFMインバータを制御できるEMSも同時開発しており、地域マイクログリッド事業や配電事業などに対して一括提供していく方針だ。

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