ESI土肥社長が語る

ドイツ再エネ最前線

このように、太陽光発電が住宅用の自家消費用途で導入量が再び伸び始めているのが、ドイツ市場の特徴ですが、一方でドイツを始め欧州では太陽光発電所の建設費が驚くほど下がっています。今年7月下旬、ポルトガルの入札で世界最安値の売電単価をさらに更新したというニュースがありました。価格は1MWhあたり14.8ユーロですから、日本円にしてkWhあたり1.74円です。ポルトガルは土地の造成費や日照時間など日本と異なるので、安易に比較はできませんが、日本の諸条件を加味すれば恐らく4.5円程度で売電するイメージではないでしょうか。

この安価な再生可能エネルギー電力は、流通の常識も変えようとしています。ドイツでは、再エネ電力を電力卸売市場へ販売するFIP(フィードインプレミアム制度)の仕組みが整っていますが、電力卸売市場では再エネ電力がゼロユーロの評価額になる現象が起きているのです。つまり時間帯によって再エネの供給量が需要量を超えているというわけです。

ドイツではFITが2000年にスタートしていますから、間もなく〝卒FIT〟の格安電力が市場に出てきます。数年後にはそれこそゼロ円の電力が大量に流通し始めると、これは大きな波紋を広げるでしょう。

そこでドイツではここ最近、新しい試みが生まれています。ゼロ円の再エネ電力を使って水素を生成し、水素としてエネルギーをためようという取り組みです。まだ実証試験段階のようですが、この水素燃料化の技術が実用化されると、非常に面白いですね。

水素ですから、燃料電池を介して電力や熱に変換できますし、燃料電池自動車が普及すれば、それこそ車の燃料としても利用できます。ドイツの再エネ市場は次のフェーズに入ったと言えるのではないでしょうか。

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