土肥社長が語る

2020年の太陽光発電市場

激変必至の太陽光発電市場。2020年はどう変化するのか。ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長が予測した。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち)1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

2020年、太陽光発電市場は大きく変化するでしょう。とくに低圧太陽光発電の新規認定が余剰売電に限定される制度改定が正式に確定すると、企業の事業環境は一層厳しくなります。19年度までの開発案件を抱えている企業ならば、1年程度は開発を継続できるでしょうが、案件を持たない企業も少なからず存在します。

いずれにせよ、鍵はFIT全量売電以外の事業への展開です。軸になるのは、自家消費提案と住宅用太陽光発電でしょう。両分野のマーケットは拡大すると思われますが、もうひとつ、私は既存の太陽光発電所に関わるビジネスにも注目しています。すなわち、O&M(管理・保守)やセカンダリー(中古太陽光発電所の売買取引)です。

FITを活用した太陽光発電所の新規開発が冷え込んだとしても、FITに関わる投資活動を継続したい方々は一定程度残るでしょう。そのような方々は既存の太陽光発電所の購入を希望します。買い手が存在すれば、売り手も現れますから、太陽光発電所を売却する発電事業者は必ず登場するのです。仮にそうした発電事業者が全体の1%だったとしても500MW、2%ならば1GWですから、市場はある程度活性化するのではないでしょうか。

そうなれば、O&Mに対する見方も変わります。セカンダリー市場で太陽光発電所を高く売るために、資産価値を高めるO&Mが重宝されるようになるのです。発電事業者はより有効なO&Mを求めるようになり、O&M業者の間で競争が生まれます。恐らくEPC(設計・調達・建設)企業が手掛けているO&Mは地域や規模に特化したサービスが主流になるでしょう。

一方で、営農用太陽光発電の動向も注目です。営農用は、低圧であっても全量売電が継続される方向なので、農業振興の観点から普及が加速するかもしれません。少なくとも、農地の規模などから推測すると、ポテンシャルは絶大です。

ただ、農業によほど精通している企業か、農業のコンサル企業などと提携して本腰を入れて取り組む覚悟のある企業でなければ、事業の運営は難しいように思います。営農用はあくまでも農業が主でなければなりません。しかも顧客は主に農家です。遮光による農作物への影響に関する知見はもちろん、パネルの下で生産した農作物の販路開拓支援や農業者の斡旋などまで、複合的なサービスが求められ、再エネ事業の範疇を大きく超えてしまいます。