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群馬県中之条町、ふるさと納税の再エネ返礼再開

ふるさと納税の返礼品として再エネ電力を供給する動きが出てきた。返礼として認められる電力の基準が示され、群馬県中之条町が再開した。再エネの普及に弾みがつくかもしれない。(本誌・楓崇志)

中之条町は返礼品に地元の再エネ電源を活用する。写真は沢渡温泉第1太陽光発電所

ふるさと納税は、地域活性化を目的とした税制で、個人が応援したい自治体に寄付できる仕組み。寄付すると、自治体からの返礼品として特産品などを受け取れるうえ、所得税や住民税が軽減されるため、利用者は増加。総務省の統計によると、2020年度は前年度比1.5倍の3289万件、受入総額は同比1.4倍の6725億円にのぼった。

この状況下、返礼品として再生可能エネルギー電力を提供する動きが活発になりそうだ。群馬県中之条町は21年11月末、町内の太陽光発電所や小水力発電所が生み出す再エネ電力を同町の自治体新電力会社、中之条パワーを通じて提供する再エネ返礼を開始した。

もっとも、中之条町は、国内で初めて自治体新電力会社を設立し、再エネの普及にも積極的。17年3月には全国で先駆けて再エネ電力を返礼品として扱い、21年度までに累計90件弱の寄付を受けつけていた。だが、送配電網には地域外の電力も混在することから総務省が21年4月に電力の返礼を認めないと通達。中之条町をはじめ、再エネ返礼を始めていた福島県楢葉町や熊本県小国町、長崎県五島市は、受付の停止を余儀なくされていた。

しかし、総務省は方針を改め、21年6月には「地域資源を活用し、区域内で発電された電気」であれば、電力の返礼を認めるとし、「電力の小売り供給契約において区域内で発電されたことが明示できること」を条件として挙げた。これを受け、中之条町は再エネ返礼の再開に向けた準備を進め、中之条パワーは産地を契約約款に明示したうえで、寄付者に供給する再エネ電力に地産の環境価値を証明するトラッキング付き非化石証書を付与することで基準に適合させたのである。

中之条町の再エネ返礼は、東京電力管内の一般世帯を対象に1口25万円の寄付額に対し、2500kWh分の再エネ電力を供給するというもので、受付件数は50口まで。中之条パワーへの電力契約の切り替えを前提とし、契約の有効期限を電力の供給開始から1年とした。中之条パワーの山本政雄社長は、「(2500kWhは)概ね7~8ヵ月で使い切れる量だ」としたうえで、「(再エネ返礼の)再開当日に早速申込みがあった」という。

自治体支援のトラストバンクが運営するふるさと納税総合WEBサイト『ふるさとチョイス』からも申し込みを受け付ける。トラストバンク新規事業本部エネルギー事業部の丸山大地氏は、「地域の再エネを応援する仕組みゆえ、脱炭素化や再エネ電力の価値向上に繋がる」と語る。なお、同社のWEBサイトでは大分県杵築市も再エネ返礼を始めているようだ。

再エネ返礼が全国的に拡がれば、再エネの普及に弾みがつくかもしれない。

美野原小水力発電所も地産電源のひとつ(左)と『ふるさとチョイス』の申込画面(右)

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