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営農用太陽光、FIT認定数と転用数に大きな乖離

不明瞭な審査基準

現地研修会には県西部の農業委員会をはじめとする多くの関係者が参加した

ともあれ、農地の一時転用を審査する農業委員会は、許可の判断に悩まされていることだろう。農地法には農地の一時転用許可の審査基準が細かく定められておらず、許可権者は各々の基準で審査しているからだ。

営農用では、18年5月より一定の要件を満たせば3年以内の農地転用期間が10年以内まで延長できるようになった。20年度以降は、その10年以内延長要件がそのまま営農用のFIT認定要件となった経緯がある。しかも〝10年以内〟の解釈は様々で、転用期間が満期10年になるとは限らない。要件を満たしても、自治体によっては4〜5年で再申請を求めるところが少なくないのだ。ある営農用事業者は、「要件を満たしていても、10年の許可は出さないと決めている自治体まである」としたが、「悪質な事業者がいるのも事実。風評被害が広がるよりは厳格な審査の方がよいのかもしれない」とこぼす。

しかし、金融機関からの借り入れを円滑にするために転用期間が延長されたわけだ。事業者が再申請を定期的に求められてしまうと、制度の効果は期待できない。資金調達を円滑にする制度設計をいま一度再考するべきときなのかもしれない。

ただ一方で、農業委員会のなかには、研究会を開き、農地一時転用の審査基準を明確にする動きもある。

静岡県内の農業委員会の会長や農業団体で構成されている静岡県農業会議は営農用の審査の支援などを目的に21年5月に静岡県と連携して研究会を立ち上げた。静岡県農業会議の黒柳康江専務理事兼事務局長は、「各農業委員会で参考にしてもらうための判断基準のモデルをつくり、提示していくつもりだ」と話す。

実際、研究会では、営農用の一時転用許可の審査基準のガイドラインの作成や、優良事例の現地見学会などを開き、発電事業者や設計・施工業者との連携の場を提供している。黒柳専務理事は「許可のマニュアルを農業委員会の会員と作成する。申請手続きに関するロールプレイングの研修会も予定している」と語る。

千葉市農業委員会は、一時転用許可後の営農者の支援を始めており、営農用の事業者と実証試験を進める方針だ。千葉市農業委員会の表谷拓郎事務局長は、「8割収量をどう確保するか、技術的に検証し、営農者のために営農指導を行う」とし、「営農用では優良事例に準じた水準を目指していきたい」と述べる。

農業分野でも再エネが一躍を担うのは間違いない。健全な発展のためにも、営農と発電事業が機能的に融合するような制度設計が望まれる。

静岡県農業会議では研究会を設置している

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