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常陽銀グループ、100%出資で再エネ新会社設立へ

50億円15MW開発を計画

常陽銀行は2022年5月13日、金融規制緩和を受け、投資子会社の全額出資で再エネ新会社を設立すると発表した。太陽光発電所を開発し、企業の脱炭素化を支援する。(本誌・中馬成美)

常陽銀行は100%出資の投資子会社、常陽キャピタルパートナーズを通じて資本金500万円の孫会社、常陽グリーンエナジーを設立する。新会社の設立によって太陽光発電所の新規開発や中古物件を取得し、地元企業に再生可能エネルギー電力を供給して脱炭素化を支援する。新会社では3年で50億円規模の資金を常陽銀行から調達し、約15MWの太陽光発電所を開発・取得する。現在金融庁に認可を申請しており、7月頃にも設立する予定だ。

同行は21年5月に成立した銀行法等の改定により、銀行業高度化等会社の業務範囲が緩和されたことを受け、新会社を設立した。金融の規制緩和により、銀行は本業に加え、地域活性化など持続可能な社会に資する業務が可能となり、認可取得を条件に出資規制の上限なく銀行業高度化等会社を設立できる。常陽銀行はこうした法改正を背景に100%出資の投資子会社が全額出資する形で、地域の脱炭素化に貢献する新会社の設立に動いたわけだ。

常陽銀行コンサルティング営業部営業担当の小松崎光一常務執行役員は、「コロナ禍の影響もあって太陽光発電所の売却相談もある。既存の顧客網を活かした事業展開が期待できる」とし、「取引先から脱炭素化を求められる地元の中小企業に支援できれば、地域雇用の維持や経済の活性化に繋がる」と新会社設立の意義を語る。

新規の太陽光発電所は高圧を中心に開発する。すでに稼働済みの中古物件のほか、認定を取得してこれから建設する予定の案件も取得する考えで、小松崎常務は、「FIT認定で建設予定の案件は資金面の相談が多いため、中身を精査したうえで事業者とともに開発していきたい」と話す。

PPA(電力売買契約)事業にも早期に取り組む方針で、現在事業化に向けた準備を進めている。小松崎常務は、「資材の調達や施工は既存の取引先と連携して進めていきたい」と地元企業との協業も視野に入れる。長期的には、太陽光発電設備のO&M(管理・保守)や太陽光パネルのリユース、リサイクル事業、地元の森林組合と連携したJクレジットの発行など派生事業にも着手するという。

銀行法の規制緩和によって再エネ事業に着手する地方銀行が今後増える可能性がある。5月12日には山陰合同銀行も資本金1億円を全額出資して再エネ関連の事業子会社、ごうぎんエナジーの設立を発表。同行も現在許可申請中で7月頃に新会社を設立する予定だ。銀行の再エネ事業が本格化すれば、自治体や民間企業との協業や連携に弾みがつきそうだ。

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