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環境省、脱炭素先行地域を20ヵ所選定

今年度2回目 計46地域に

環境省は2022年11月1日、今年度2回目となる脱炭素委先行地域の採択結果を公表した。20の自治体が選ばれ、脱炭素先行地域は計46地域となった。(本誌・中馬成美)

環境省は、先行して脱炭素化を進めるモデル地域を多数つくって、地域の脱炭素化を促す〝脱炭素ドミノ〟を狙う。2030年度までの民生部門の脱炭素化に向け実現性の高い事業計画を提示した自治体を『脱炭素先行地域』とし、50億円を上限に総事業費の3分の2を補助する手厚い支援策を始めた。22年度から年2回程度選考し、25年度までに脱炭素先行地域を少なくとも100ヵ所選定する予定だ。

7月26日から1ヵ月間、22年度2回目の公募を募り、9月から5回に亘って評価委員会を開催。全国各地の自治体から寄せられた50の事業計画を厳選し、岩手県久慈市や長野県飯田市、神奈川県小田原市、福井県敦賀市、滋賀県湖南市、京都市、奈良県三郷町、山口市、沖縄県与那原町など、20ヵ所を選定した。

環境省によると、今回採択した計画は1回目の選考で漏れた提案が多かったようで、環境省大臣官房地域脱炭素事業推進課の犬丸淳課長は、「たとえば、地域新電力会社を設立するという計画が、今回は金融機関の支援体制や事業者の役割分担、電力消費者にインセンティブを与える価格設定などが盛り込まれており、具体化されていた。計画の実効性が高まった点が評価されたように思う」と語る。

実際、評価委員会は、「新たな再生可能エネルギー設備導入の確実性」、「関係者との合意形成」、「地域経済循環への貢献」、「事業性の確保」、「地域の将来ビジョン」の5つを重視しており、それに合った事業計画が採択されている。

たとえば、沖縄県で初めて脱炭素先行地域に選ばれた与那原町の事例だ。与那原町は、新電力会社のおきなわパワーHDや与那原町商工会などが参画するコンソーシアムとの共同提案で応募し、住宅や商業施設にPPA(電力売買契約)方式で太陽光発電設備と蓄電設備を導入する計画を提示して採択された。「新たな再エネ設備導入の確実性」が認められたわけだが、さらに「関係者との合意形成」においても、高く評価されたようだ。

与那原町企画政策課の山城司課長は、「町内の団体に勉強会や説明会を複数回実施し、計画に対する住民の認知度を高めた。太陽光発電設備の導入計画は20年頃から段階的に住民へ説明してきた」と振り返る。

もっとも、円滑に合意形成が進んだ背景には、今回脱炭素推進エリアとなった東浜地域に大型施設を誘致する計画があり、町が数年前から説明会を開いてきたという経緯がある。おきなわパワーHDの磯部達社長は「地域住民の合意形成には時間がかかる。自治体は既存の都市計画などを踏まえ、脱炭素化による地域づくりをどのように進めていくか、丁寧に伝えていく必要があるだろう」と語る。

一方、「地域経済循環への貢献」も重要な要件だ。長野県飯田市は今回、太陽光発電設備の設置と地元企業を支援する地域PPAコンソーシアムを構築しつつ、工事を標準化して施工費を低減する計画を示し、採択されている。

与那原町は脱炭素化を通じて産業創出と地元企業の競争力強化を図る。写真は与那原町役場

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