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「ゾーニングは、脱炭素化の未来図との両輪で進めよ」

名古屋大学大学院 環境学研究科 丸山康司教授

プロフィール●まるやま・やすし 東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修了。博士(学術)。青森大学講師、産業技術総合研究所研究員、 東京大学教養学部特任准教授などを経て現職。編著「どうすればエネルギー転換はうまくいくのか」(新泉社)著書「再生可能エネルギーの社会化」(有斐閣)、「再生可能エネルギーのリスクとガバナンス」(ミネルヴァ書房)ほか。

自治体は『促進区域』の設定と同時に、地域裨益型の再生可能エネルギー事業のルールを明確化する必要がある。これはトラブル防止の観点からも有効だ。たとえば、風車を立てる事業者に距離を取るよう規制しても、騒音を気にする人はいる。環境影響による再エネ規制と近隣住民の不快感は必ずしも相関しないのだ。騒音にのみ着目すると、風車は一切立てられないという極端な対策しか取れなくなるので、前提として地域住民に利益をもたらす再エネ事業であるべきなのだ。

再エネの導入にあたって調整が必要な区域には、条件を設定することも重要だ。たとえば『順応的管理』である。事前に調査しても予想外の事態が起こるという前提のもと、問題が発生した際の事後的対応を事業者に義務付けるわけだ。順応的管理を用いれば、環境影響の可能性がある場所も調整エリアとして再エネ導入が見込める。

ともあれ、再エネの導入に関しては自治体間で温度差がある。自然公園の一部でも、再エネを設置したいという自治体があれば、その逆もある。重要なのは、再エネをどう位置づけるかだ。単に脱炭素化をゴールとするのか、地場産業として育成するのか。ゾーニングは脱炭素化の未来図の形成と両輪で進めるべきだ。

いずれにせよゾーニング後の再エネ導入のポテンシャル情報は共有すべきである。これは2050年までの脱炭素化を見据えた計画の策定に関係する。ゾーニングは事業者や住民とのコミュニケーションの手段でもあり、情報共有の意味合いもある。住民にとっては促進区域で進められる再エネ事業を予測でき、事業者にとっては開発期間の短縮に繋がる。地域にとって望ましい再エネをいかに増やせるか、自治体にはルールを整備していく役割がある。

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