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「不良品割合はゼロが基本」

長州産業 岡本晋社長

コロナ禍で太陽光パネルの需要が停滞し、販売が振わなかった時期もあったが、需要はほどなくして回復した。それよりも問題は2021年10月頃から始まったロックダウンだった。

当社は国内で太陽光パネルを生産しているが、ガラスやバックシートのほか、様々な電子部品は海外から輸入している。ロックダウンの影響は非常に大きく、一時は工場の稼働率が半分程度まで落ち込み、作業台に注残の資料が積み上がるほどだった。結局、通常の生産を再開できるようになったのは22年5月からである。

それはさておき、今回の生産増強に関しては、綿密な分析や戦略があったというよりは、太陽光パネルの生産をやり切ろうという強い思いが先行したというのが正直なところだ。当社が山口県内で太陽光パネルを生産することを評価してくれる顧客がいて、その顧客に支えられて当社はこれまで事業を継続できた。それを考えたとき、生産を止めるという選択肢はなかったのである。つまり、生産を続けるためには、増産は必然で、それが今回のタイミングだったということだ。

実際、何かトラブルが発生したとき、生産を継続していれば、迅速に代替パネルを出荷でき、顧客へのアフターサービスも継続できるが、生産を止めてしまうと、その対応すらできなくなる。

技術開発についても同じだ。たとえば、当社の主力製品、『プレミアムブルー』は、ヘテロ接合のn型単結晶セルを搭載した高効率パネルであるが、紫外線領域の活用などまだ進化の余地が残されている。ただこれは当社が国内で生産を継続しているからこそ、その可能性を把握できるのであって、ひとたび生産を中止すれば、忽ち技術の進歩についていけなくなるだろう。

むろん、500MWという生産規模は、中国の太陽光パネルメーカーの生産規模に比べれば遥かに小さい。とはいえ、100MWと500MWでは、部品調達の交渉力なども含め、大きな違いがあるのだ。

もっとも、当社の太陽光パネル生産における強みは、品質管理体制である。各種検査を徹底し、総出荷量に占める不良品の割合はゼロというのが基本だ。はんだ付けの工程の後には余分なものをすべて削り落とす。端子ボックスに樹脂を入れるポッティングにおいても、僅かな気泡の混入も許さない。実際、これが問題になることはまずないが、雨水が入ってサビや漏電を招く可能性がゼロでない限り、当社では徹底して取り除くのである。

恐らくこれらを非合理的だと思う者もいることだろう。ただ我々には、数%の不良品は仕方がないという発想はないのだ。

販売面では、できれば今回の増強分もすべて住宅用太陽光パネルとして販売してきたい。東京都の設置義務化の動向などを見る限り、住宅用太陽光発電市場は成長局面にあるように思う。ハウスメーカーや販売店などへの提案を強めていくつもりだ。

新製造ラインの目視検査工程。品質管理には力を入れる

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