VPPが拓く再生可能エネルギーの新世界

「鍵は、再エネ発電量の予測力と市場値動きの察知力」

京都大学大学院経済学研究科 中山琢夫特定講師

先行するドイツの電力市場でアグリゲータはどのような事業を手掛けているのか。欧州の電力事情に詳しい京大の中山特定講師が語った。

ドイツにはバイオガス発電所のような調整しやすい再生可能エネルギー電源が多く存在するため、たとえば大学発ベンチャーのアグリゲータ、ネクストクラフトベルケはバイオガス発電から扱い始めた。彼らは需給調整市場に参入し、卸電力取引所の値動きに連動させて価格が高い時に自動で遠隔からバイオガス発電設備を稼働させるといった事業を行っている。

FITがなくなり、FIPが導入されると、発電事業者をまとめて需給管理するバランシンググループをつくり、発電計画の作成代行サービスが広がった。当然、太陽光発電や風力発電のような発電量が変動する再エネも扱う。そこで重要なのが、発電予測の精度で、ネクストなどは5社ほどから気象データを購入し、独自に解析して発電予測している。

発電予測は扱う発電所の数が増えれば増えるほど精度が増す。それだけに、アグリゲータによる発電事業者の囲い込みが進み、発電事業者を買収するアグリゲータも出てきた。とはいえ、アグリゲーション(電力制御仲介)事業は薄利ゆえ、アグリゲータはサービスを複合的に手掛ける必要がある。たとえば、発電所の運転計画などのデータが蓄積するので、小売り会社や電力消費者に安い電力代時間帯の情報提供などである。

アグリゲーション事業における成功の鍵は、多くの発電所を確保すること。そしていかに価格が高い時間帯、あるいは安い時間帯に売買できるかである。

もっとも、取引市場で極端な値をつけているときは、電力が極端に余っているか不足している時であり、そこにアグリゲータが入ることで、電力系統の負荷が減る。再エネを増やすために、アグリゲータの力が必要なのだ。

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