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コロナ危機対策で独再エネ再燃か

ドイツの再エネ企業にコロナ禍の影響が出始めるなか、政府がコロナ危機対策として再エネの普及に力を入れる可能性が出てきた。(ドイツ在住環境アナリスト・西村健佑)

新型コロナウイルス感染症拡大の影響が深刻なドイツでは、再生可能エネルギー企業にも影響が出始めた。第1四半期(2020年1〜3月)に純利益が前年同期比2倍弱の1億3300万ユーロと好調だった風力発電機メーカーのノルバデックスは、サプライチェーンの混乱で第2四半期以降の業績予測は不可能とした。同じく風力発電機大手のシーメンス・ガメサは、業績を下方修正。通年で赤字に転落すると公表した。

ただ、コロナ禍による再エネ発電所の工事遅延問題には対策が講じられそうだ。現行の再エネ法では、市場プレミアムを受け取る権利を得たプロジェクトには稼働開始期限が定められ、間に合わない場合は支援額が減額される。太陽光発電では入札結果の公示後18ヵ月経っても工事の遅延等で支払い申請がなされない場合、支援額は1kWhあたり0.3ユーロセント減額される。だが、コロナによる完工遅延に対し、ドイツ政府は支援額の減額を免除する必要があるとして、再エネ法の改正案を提出した。20年5月中旬に成立させ、逆上って5月1日からの適用を目指す。

一方でエネルギー転換によって経済再建を図る案が浮上した。ペーター・アルトマイアー経済エネルギー相は5月4日、州大臣とのコロナ対策の会合で、コロナ危機からの経済の立て直しを目的にエネルギー転換を加速させる考えを訴えた。

具体的には太陽光発電の導入量が52GWに達した時点で支援を打ち切るとしていた再エネ法のルールを一時的に撤廃する。さらに38年までの脱石炭の具体的な行程を定める脱石炭法を夏前までに成立させ、再エネ賦課金の引き下げによる電気代負担の軽減策も提案。

これらは確定していないが、BDEW(独エネルギー水道事業連盟)が自動車購入のプレミアムはエコカーのみに限定すべきと訴えるなど、コロナ禍の金融支援をエネルギー転換に充てるべきとする考えが広がっている。また、再エネ需要再燃を見越して再エネ由来の電力を証明する発電源証書を購入する動きが出てきた。実際シュタットベルケ・ウンナは21年の分の証書をすでに確保したという。

ともあれ、配電会社のようにインフラを運営する企業は、社員がコロナに感染しないように様々な対策に追われている。マスクの手配や、重要な人材を管理センターに泊まり込みさせるなど対策に追われている。

コロナ禍の軽減に向け、官民の協力の必要性は益々高まっている。

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