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不足する銅線ケーブル

太陽光発電所建設が停滞

電線メーカーが相次いで銅線ケーブルの新規受注を停止し、太陽光発電所の建設工事が停滞ぎみだ。この状況下、アルミケーブルで代替する動きも出てきた。(本誌・岡田浩一)

2023年11月以降、日本の電線メーカーが相次いで銅線ケーブルの新規受注を停止した。12月5日には100社以上の電線メーカーが所属する業界団体の日本電線工業会が、会員各社が銅線ケーブルの新規受注を停止したことを公表した。

この要因について、大阪万博向けの工事や熊本県内の半導体工場の建設など、大規模な工事が重なったことを原因とする向きがある一方、発注の時期が重なっただけとの見方もある。

実際、ある電線メーカーの担当者は、「例年、盆明けから年末にかけて徐々に需要が伸びていくものであるが、23年は需要の立ち上がりが遅く、9月に注文が集中したため、対応が難しくなった」と振り返る。

つまり、注文が一定期間に集中して電線メーカーが一部受注を制限したため、利用者が疑心暗鬼になって必要以上にケーブルを注文した。その結果、銅線ケーブルの需給が逼迫したというわけだ。実際、銅線ケーブルは夏以降に注文が集中する傾向にあるようで、日本電線工業会は「例年5~8月期の低需要期には生産余力が生じるため、納期に余裕を持って発注してほしい」と呼び掛けている。

ともあれ、銅線ケーブル不足は、再生可能エネルギー企業にとっても悩みの種だ。太陽光発電所のEPC(設計・調達・建設)会社、ハウスプロデュースの廣畑伸太郎社長が、「仕入れ先を開拓するなど、対応に追われている」と述べれば、EPC会社の日本エネルギーホールディングスの藤木慎太郎社長は、「ケーブルが手に入らず、工事が止まっている案件もある」と明かす。

特に苦しいのは、補助金案件を抱える施工業者だ。補助金要件として運転開始時期が定められているだけに、工事遅延は許されない。ただ、経済産業省は「補助金案件に関して、ケーブル不足による工事遅延は事故繰越制度の対象として、運転開始時期の延長が認められる可能性もある。まずは補助金執行団体に相談してほしい」と注意を促している。

とはいえ、いつまでも工事を止めておくわけにもいかない。対策として考えられるのは、代替品の活用だ。

たとえば、中国製のケーブルなど、JIS(日本産業規格)に適合していなくても、IEC(国際電気標準会議)規格に準拠した製品であれば、発電事業者の許可を前提に使用することは可能だ。ただし、ケーブルは火災事故の原因となるだけに事前のリスク分析に時間はかかる。あるいは、輸送費が上乗せされ、価格が合わない場合もあり得るだろう。

一方、アルミケーブルで代替する方法もある。一般に銅線ケーブルと比べて軽く施工性が高いうえ、地金相場が安定している。盗難に遭い難いという利点があり、かねてより施工業者間では関心が高まっており、ここに来てアルミケーブルを利用する動きも出てきた。

アルミ導体ケーブルを製造する古河電工産業電線の執行役員事業戦略室長兼営業本部企画部長の高山勝行氏は、「年末から年始にかけて、アルミケーブルへの問い合わせが急増している」と状況を語る。

ただし、アルミケーブルを活用するためには、専用の工具や端子などの部材が必要で、初めて使用する業者は電線メーカーの講習を受講しなければならず、準備に一定の時間はかかる。

では、銅線ケーブルの需給逼迫はいつ解消するのか。すでに一部のメーカーが受注再開に動き出したようで、「4月までには新規受注分の納品を再開させる」(ケーブル販売会社)との声もある。今後も銅線ケーブル不足問題は生じかねない。余裕を持った注文を心掛けるべきだろう。

古河電工産業電線の銅線ケーブル(奥)とアルミケーブル。アルミケーブルへの問い合わせが増えているようだ

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