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新電元工業、不採算 PCSの生産終了へ

事業構造改革の一環

分散型PCS(パワーコンディショナ)製造の新電元工業(東京都千代田区、鈴木吉憲社長)は2020年11月6日、事業構造改革の一環で、採算性の悪いPCSの生産を計画的に終了すると発表した。21年9月頃を目途に三相12.3kW機の生産を終了する予定だ。

同社が生産終了を決めたのは『PVS-Bシリーズ』の定格出力12.375kWの三相3線式PCS。16年10月12日付でJET(電気安全環境研究所)認証を取得した機種で、国内大手へのOEM(他社ブランドでの生産)を含め、4台で49.5kWを構成できるなどの特徴を活かして低圧太陽光発電所で多く採用されてきた。

同社はコロナ禍の影響による自動車市場の落ち込みで業績が悪化。21年3月期第2四半期決算では19.54億円の営業損失、49.94億円の最終損失を計上した。通期でも31.54億円の営業損失、71.94億円の最終損失を見込む。11月6日に事業構造改革案を発表し、不採算製品を整理する方針を明らかにしており、その整理対象となったのが12.3kW機だったわけだ。

同社経営企画室によれば、「FIT単価の下落などがあるなかで同機種の採算性が悪化し、収益性の改善に向けた取り組みを実施していたが、今回の構造改革で生産終了を決めた」という。同機種のJET認証が21年10月11日に有効期限を迎えるため、同年9月頃を目途に生産を終了する予定だ。同容量の後継機はつくらず、認証も更新しない。販売後のアフターサービスは継続する。

なお、『PVS-Bシリーズ』の12.3kW機の生産を終了するが、同じく現行の三相PCSである『PVS-Cシリーズ』の定格出力10kW及び9.9kW機は「生産を当面継続する」(経営企画室)としている。

同社は10年夏に三相10kW機のJET認証を取得し、太陽光関連市場に参入。FIT開始当初は絶縁トランス内蔵型という特徴を活かし、低圧太陽光発電市場の占有率を高めたが、単相PCSの本格参入や海外勢の伸長による競争激化とともに低迷。FIT単価の下落もあって苦戦が続いた。とくに20年度から低圧太陽光発電の新規認定が全量売電の対象外となり、新規需要は停滞気味だ。市場が縮小するなかで10kW級の他機種と併存する意味合いが薄れてきたのかもしれない。

同社に限らず、FIT収束を受け、太陽光関連事業を再編するメーカーは少なくない。その一方、国は50年までのカーボンニュートラルを宣言するなど、脱炭素社会の実現に向け、大きく舵を切った。事業の縮小にとどめるのか、撤退するのか、難しい経営判断に迫られている。

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