再エネ技術で世界を狙う! 台湾勢が日本市場に熱視線

2018.12.25

PVeye

 台湾政府が再エネの導入を強く推進しており、再エネ事業に力を注ぐ台湾企業が多い。彼らの多くは台湾国内だけではなく、海外展開をも視野に入れている。

 2016年5月に蔡英文政権が発足した後、台湾政府は脱原子力発電を目指して、再生可能エネルギーの導入を推進してきた。しかし、18年11月に行われた住民投票で、25年までに原発全廃を目標とする脱原発政策を見直すことが決まった。再エネの導入が減速しかねないが、台湾の再エネ関連企業にとって、それほど大きな影響はないのかもしれない。なぜなら、彼らは始めから海外展開を視野に事業展開してきたからだ。
 たとえば18年10月に誕生したユナイテッド・リニューアブル・エナジーは、太陽電池セルの年産能力が約3.8GWと台湾で最大規模を誇るが、今後は太陽光パネルメーカーへの転身を遂げ、世界へ打って出る構えだ。
 同社はセル大手のネオソーラーパワー、ジンテック、ソーラーテックエナジーの3社合併で設立されたが、ここ数年は太陽光パネルの価格競争が激化し利益率を落として3社とも赤字続きだった。
 そこで、「高効率や高性能なパネル販売に特化する」(ユナイテッド・リニューアブル・エナジーの沈維鈞総経理)ことで利益率を高め、中国パネルメーカーとの差別化を図ろうというのだ。パネルは単結晶シリコン系に絞り、なかでも両面ガラスや両面発電製品の販売に力を注いでいくという。
 セルの生産能力は高効率品に絞るため3GWまで減らすが、パネルの年産能力は現在の約1.1GWから、19年内に1.6GWまで拡張する。
 沈総経理は「台湾、米国、日本でハイスペック品の需要が高い」と見ており、提案を強めていく考えだ。自社ブランドでの販売とOEM(他社ブランドでの生産)の両輪で攻める。
 一方、太陽光発電向け遠隔監視メーカーのシィンナリオは、16年設立のベンチャー企業だが、すでに台湾では100ヵ所近くの太陽光発電所に製品を納品、19年以降は本格的に海外展開を強めていく。
 同社は遠隔監視装置の販売にとどまらず、発電量などのデータをクラウド上で集めて解析し、異常の予兆などを事業者に伝えるサービスを併せて提供。なかでも好評なのがスマートアラーム機能だ。これはAI(人工知能)が売電収入に影響する異常を検知して事業者に知らせるというもの。
 たとえば、パネル清掃も、1年に1度といった定期の清掃ではなく、AIが発電量データなどを見ながら、適切な清掃時期を都度知らせてくれるため、経済性が向上する。実際、同社のサービスを受けたことで、「売電収入が17%も向上した」(同社の蘇孟昌氏)実例もあるようだ。
 他にも、同サービスを導入すれば、これまでの点検や修理履歴などをすべて記憶し、スマートフォンなどの端末からいつでもどこでも確認することができるため、管理がしやすくなる。
 遠隔監視装置は1台でPCS(パワーコンディショナ)80台まで対応できる。本体価格は1台11万円程で保証期間は5年。月々のサービス利用料は1kWあたり数千円が目安だが、ネット環境は事業者側で用意する必要がある。
 蘇氏は、「次は日本や東南アジアへ展開したい。メンテナンス会社と提携し、発電事業者に喜んでもらえるようなサービスを提供していきたい」と思いを語る。

 架台メーカーも日本へ

 太陽光発電用の架台市場では、中国メーカーが台頭している。他国には真似できない圧倒的な量産効果で価格を低減し、世界中でシェアを拡大している。しかし、日本や台湾などの島国は沿岸部が多く、塩害による被害も多い。特に架台は錆など直接被害を受ける。
 そこで、台湾の架台メーカーは、台湾での実績をもとに日本市場への供給を視野に動いている。
 アルミメーカーのJY璟元光電は、太陽光架台にも自社のアルミを使う。同社の大帥董事長特別助理は、「我々は世界で初めて太陽光架台に『6061-T6』を使ったメーカーだ」と強調する。6061-T6とはアルミの材質だ。自動車部品などでも使用されており、強度、耐食性に優れる。引張強度は30kg/m㎡で、一般的な太陽光架台に使用されるアルミのA6005の1.2倍以上である。
 普通なら、価格は高くなりそうだが、同社はアルミ自体を自社で製造しており、他の製品用とともに生産するため、量産による価格低減が可能で、太陽光架台はkWあたり2600台湾元(約1万円)程で販売できるという。18年は台湾市場へ150MW出荷し、19年は240MWを計画している。
 同社は海外展開でまず日本市場を見据えており、大董事長特別助理は、「日本市場では高品質な製品が求められるが、我々の製品ならば間違いなく対応できる」と胸を張る。
 同じ架台メーカーでもチンシンは、鉄製架台を製造している。材料は高耐食性めっき鋼板のスーパーダイマだ。実は同社、すでに日本支社を設立済みで、日本での実績も豊富だ。低圧太陽光発電所向けを中心に、岩手県の15MW太陽光発電所など、大型案件での採用実績もある。
 同社製品の最大の特徴は、36ヵ国で特許を取得した溝付きワッシャ・ナットを使用している点だ。ワッシャやナットに特殊な溝を設けることで、ボルトが緩まない仕様になっている。
 同社の楊景隆社長は、「一度固定すると、治具なしでは取り外しができない。安全性を高め、メンテナンス費用の低減にも寄与する」と自信を見せる。このワッシャ、ナットは、東京スカイツリーや、原子力発電所などでも使用されているようだ。

 活発な蓄電池開発

 世界的な太陽光発電の導入拡大に伴い、蓄電池の需要も増えている。今はリチウムイオン蓄電池が主流だが、技術的には頭打ちで、世界中で革新的な蓄電池開発が進められている。台湾にも蓄電池開発を進める企業がある。
 燃料電池製造などを手掛けるフューセルは、バナジウム液体を活用した蓄電池開発に取り組んでいる。
 バナジウム液体を使う利点について、同社の陳嘉鴻董事長は、「高い変換効率と、安全性が期待できる」といい「変換効率はリチウムイオン電池よりも上で、バナジウム液体は高温になれば分解するため、液体自体は燃えない」と説明する。
 同社は5年前に開発を始め、技術的に目途がついたため、現在は量産化に向けて準備を進めているようだ。
 蓄電池自体の開発もさることながら、最近では系統安定化用の大型蓄電設備の需要などが高まっていることもあり、蓄電池や蓄電用PCSで使う関連機器の開発も盛んだ。
 台湾でも有数のDC/DCコンバータメーカーであるMINMAXはこのほど、大型蓄電池などにも対応できるよう、入力電圧110V対応の産業用コンバータを開発、19年にも量産体制に入る。欧州やアジア、米国のメーカーに提案を強めていく構えだ。
 新製品は、従来の基板が追加で必要となる勘合式ではなく、初めから基板をつけたシャーシ式にした。「設置場所を選ばず、取付け時間も短縮できる」と同社業務部の鄭全宏課長はいう。

 水素技術も世界水準

 太陽光発電や蓄電池以外にも、次世代エネルギーとして期待値が高いのが水素技術だ。台湾でも水素関連の技術開発は盛んである。
 たとえば、燃料電池の試験装置を製造するヒファスエナジーは今年、150kWの自動車向け燃料電池試験設備を開発した。
 同設備について、同社の曽璽名営業責任者は「自動車向けの燃料電池は30~40kW程が一般的だが、1年前に中国の自動車メーカーからの要望で、150kW級の燃料電池を試験できる大型設備を開発した。試験設備としては世界最大で、今年10月には実際に試験を行った」と話す。
 同社は設備を販売するだけではなく、要望に応じて試験まで請け負っている。
 さらに同社は燃料電池の核となるMEA(膜・電極接合体)の製造装置も開発している。曽氏は「手作業で1枚1枚電極に膜を塗っていくものが多いが、我々はスプレー式でロールツーロール方式なので、製造時間をかなり短くできる」と特徴について語る。
 12年設立の燃料電池ベンチャー、錫力科技は、自動車やバスなど向けに出力15kW超の中・大型燃料電池を供給している。同社の黄治文総経理は「現在の製品は5代目で、台湾で唯一、自動車向けの認証が取れたメーカーだ」と誇らしげに語る。
 その同社がいま力を注いでいるのが、工場で発生する副生水素を活用する燃料電池だ。半導体工場や太陽光パネル工場などでは副生水素が多く排出され、そこに目をつけた。
 同社は水素タンクなどを含めて、パッケージ化し、システムとして売り出す方針だ。黄総経理は「太陽光パネルメーカー向けなど、2MW程受注した」と話す。システムは1kWあたり3000米ドル(約34万円)が目安。日本の太陽光パネルメーカーへの提案も積極的に行っていく。
 そう遠くない未来、台湾企業が再エネ技術で世界へ羽ばたく日が来るかもしれない。今後の動向に注目したい。

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