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営農用太陽光に規制緩和 8割要件が一部で撤廃

営農用太陽光発電の事業者が荒廃農地を利用する場合、8割収量の義務が撤廃される。農水省は荒廃農地の活用を促す狙いだ。

荒廃農地を活用する営農用太陽光発電については、8割要件を満たさなくてよくなった

営農用太陽光発電の事業者は原則、下部農地で育てる作物の収量を同年の地域の平均的な単収と比較して8割以上確保しなければならない。この〝8割要件〟は、営農用太陽光発電の制度が始まった2013年からすべての事業者に課されたが、21年3月31日以降は、荒廃農地を活用する事業者には適用されなくなった。代わりに農地が適正かつ効率的に利用されているか否かで判断されることになる。

今回の規制緩和は、20年11月に発足した『再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース』がきっかけ。8割要件を満たさなければ一時転用許可の取り消しがあり得るため、金融機関の融資が受け難くいという課題を委員らが指摘していた。

21年3月23日のタスクフォースでは、農林水産省の太田豊彦食料産業局長が「荒廃農地のなかには営農条件の悪い場所も多く、平均的な単収を上げることが難しい場合がある点を考慮した」と説明し、今回の案を公表した。農水省が対象を荒廃農地にとどめたのは、生産性のない営農用太陽光発電所が乱立する事態を避けるためだろう。

では、今回の規制緩和で営農用太陽光発電の普及は加速するのか。農水省の統計によると、18年度末までに一時転用許可を得た1913件のうち荒廃農地を活用したものは286件で全体の15%だった。千葉エコ・エネルギーの馬上丈司社長は、「伐採や伐根などに多大な時間と費用のかかる荒廃農地での営農用太陽光発電は、事業化のハードルが高い」と指摘する。まして低圧太陽光発電の売電単価がkWhあたり12円まで下がった現在、どれほど開発が進むかは疑問である。

タスクフォースの委員からは、「優良農地が(規制緩和の)対象外になると、効果は限定的」との指摘があったほか、8割要件の撤廃を荒廃農地の利用者に限らず、すべての事業者に適用するよう求める意見も出た。
 

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