JAソーラー、信越化学と特許実施許諾契約
パネル初期劣化率を軽減
太陽光パネル世界大手の中JAソーラーは、信越化学工業(東京都千代田区、斉藤恭彦社長)と太陽電池製造時のガリウム添加技術に関する特許実施許諾契約を締結した。製造時に同技術を取り入れることで、太陽光パネルの初年度劣化率を0.5ポイント改善できるという。同技術を採用したパネルは2020年から出荷する予定だ。
両社が特許実施許諾契約を締結したのは、信越化学が保有する『Ga(ガリウム)が添加されたシリコン結晶、ウエハ、セルの製造に関する特許』。今年7月末に契約を交わした。
現在、市場に多く流通しているP型太陽光パネルは、ウエハの製造過程で不純物として微量のボロン(ホウ素)を添加することが多いが、その場合、光を受けた際にシリコン結晶の中にある酸素とボロンが結合し、LID(光誘起劣化)と呼ばれる現象が発生してしまう。
信越化学は、ボロンの代わりにガリウムを添加することで、LIDが起こりにくくなる技術を持ち、それらに関する特許を数ヵ国で保有。JAソーラーは同技術を用いたパネルを製造するために信越化学と特許実施許諾契約を締結した。同技術の採用により、JAソーラーはP型太陽光パネルの初年度劣化率を2.5%から2%に改善できる見通しだ。
JAソーラーは12年に日本法人を設立。日本市場への累計出荷量は3.8GWを超える。18年の出荷量は576MWだったが、運転開始期限の迫る特別高圧発電所などが稼働を控えていることもあり、19年に750MW、20年には1GWとさらなる成長を見込む。
主力は独自のPERC技術を採用したP型単結晶パネルで、いずれも「高効率かつ高品質が強みだ」(JAソーラー・ジャパン営業本部の田中宏一本部長)。たとえば、72セル相当のハーフセル搭載単結晶パネルの場合、出力は405W、変換効率も20.2%と高い。60セル及び78セル相当品のほか、従来のフルセルタイプや両面発電タイプも揃える。
今回の契約締結により、JAソーラーは信越化学の特許技術を使ったパネル製造が可能となる。現在、生産準備を進めており、20年から出荷を始める予定だ。
まずは要望があれば対応していく方針だが、劣化率の改善は総発電量の増加につながる。パネルメーカー各社が出力向上を目指すなかで、新たな差別化要因となりそうだ。