九州豪雨で太陽光発電所が損壊

2020.08.01

PVeye

 2020年7月上旬に発生した豪雨が九州を中心に全国で猛威を振るい、太陽光発電所も被害を受けた。(本誌・平沢元嗣)

 2020年7月18日、熊本県人吉市を訪れると、痛ましい光景にたじろいだ。土埃が舞う道路の脇には泥に塗れた家財道具が積み重なり、青々とした稲が風に揺れているはずの水田は土砂に覆われていた。氾濫した球磨川の付近には、基礎から傾いた住宅や屋根のない住宅が数知れず。豪雨が発生してから2週間が経過しても、生々しい傷跡は残されたままだった。
 豪雨災害は全国に広がり、18日現在の死者数は77人、全壊住宅は585棟、床上浸水は7510棟に及んだが、とくに被害が大きかったのは熊本県南部である。7月3日0時から4日10時までの降水量が700㎜に達し、球磨川流域で堤防の決壊が相次いだ。
人吉市では、球磨川が氾濫した場所の水嵩が一時5m程まで達したようで、住民の1人は、「水嵩が膝の高さだったとき車で逃げ始めたが、すぐに腰の高さになった。どうにか車のドアを開け、命からがら逃げ出せた」と当時を振り返る。
八代市坂本町でも、鉄道橋が流されたほか、多くの住宅が全壊、被害は甚大だった。7月18日現在も、九州の一部地域では停電が続いており、坂本町では長期化する恐れもある。

太陽光発電所も被害続々

 太陽光発電所も被害を受けた。鹿児島県志布志市にあるメガソーラーでは、崖の上から構内に大量の土砂がなだれ込み、約100枚のパネルが破損した。同発電所のO&Mを請け負う堀内電気の堀内重夫社長は、「所有者は海外の方で、早く復旧してほしいと言われているが、土砂や破損したパネルを取り除くための重機を構内に入れられず、時間はかかるだろう」とし、被害総額について「設備や電気工事代で3000~4000万円、土砂の撤去費用だけでもさらに数千万円かかるのではないか」と見る。
熊本県球磨郡錦町にある太陽光発電所は、付近を流れる球磨川が氾濫したために水没。鹿児島県鹿屋市のメガソーラーも太陽光パネルの下に備えつけられていたPCS(パワーコンディショナ)まで水に浸かった。
 被害は地上設置型の太陽光発電設備だけではない。住宅用太陽光発電設備も多数被災した。人吉市の住宅地では、PCSが水に浸かり、水が引いた後も稼働を再開できずにいる。
むろん、水に浸かった太陽光パネルに触れるのは大変危険だ。JPEA(太陽光発電協会)は7月7日、水没したパネルの危険性に関して自社のホームページ上で注意喚起を促した。蓄電設備も水没した場合は使用してはならない。メーカー各社は蓄電設備を保有する被災者のもとへ急ぎ連絡をとったようである。

保険やO&Mは必須

「今回のような災害にいつ見舞われるか分からない。発電事業者は保険には必ず加入しておくべきだ」。
ヤマトソーラーの出口雅大営業本部長はそう強調する。さらに発電事業者はO&M(管理・保守)企業と契約し、災害が発生した際は即座に現地へ駆けつけてもらう体制を整えておく必要もあるだろう。
 確かに、今回のような大規模水害においては、太陽光発電設備や蓄電設備は非常用電源として機能しない側面もある。しかしだからといって、太陽光発電設備が災害対策として無意味であるはずはない。
 コロナ禍における災害では避難所へ行くのを躊躇う人が少ない。坂本町で暮らす先の女性も「コロナに感染するかもしれないので避難所に行くのは怖い」と率直な思いを口にする。ヤマトソーラーの出口営業本部長は、「車中泊をしたり、自宅待機したり、避難所を避ける人が多い」と話す。
 太陽光発電設備があれば、少なからずこうした不安を軽減できるはずだ。出口営業本部長は、「災害時の電気は非常に重要。非常用電源は、自分で自分の身を守るということに繋がる」と強調する。災害は豪雨だけではなく、台風による大規模な停電も起こり得る。コロナ禍においては、自宅で電力を生み出せる分散型電源が有効だろう。
一方で、水害で家が全壊すると、避難所生活を余儀なくされるが、全壊は一部で床上浸水がほとんどだ。この場合、掃除をしてまた家に住む人もいる。事実、人吉市に住む花田淳(69)さんは自宅が床上浸水の被害に遭ったが、「私はここに住むしかない」と打ち明け、「自宅の太陽光発電は無事だったので、これからも活用していく」と前を向く。
 花田さんは、水害に備え、PCSや蓄電設備を高い場所に設置しており、蓄電設備こそ浸水したものの、1階の天井付近に設置していたPCSは難を逃れた。
ともあれ、近年頻発する異常気象は、人為的な温室効果ガスの排出に起因する気候変動なのだろうか。
 鹿児島県鹿屋市に住む78歳の男性は、「付近を流れる肝属川が氾濫し、身の危険を感じた」と話しつつ、「いままで生きてきて、こんな大規模な水害はなかった。最近の雨や風の勢いは異常だ」と強調した。人吉市の花田さんは、「温暖化について真剣に考えないといけない。人間の責任だ」とも訴える。
 仮にもそうだとするのならば、再生可能エネルギーの重要性は日に日に高まっている。

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