過熱しない!? 卒FIT争奪戦

2020.08.01

PVeye

 卒FITの太陽光発電設備を持つ世帯が登場して半年余り。当初は卒FIT設備由来の太陽光電力をめぐる獲得競争が過熱すると思われたが、意外にも盛り上がっていない。(本誌・楓崇志)

 2019年11月、FITの売電期間が満了を迎えた〝卒FIT〟の住宅用太陽光発電設備を持つ世帯が多数登場した。一時は卒FIT設備の余剰電力の取扱いが明確でなく、〝19年問題〟と取り沙汰されたが、大手電力10社が買取りを継続し、〝問題〟は解消した。
 むしろ卒FIT設備由来の太陽光電力に環境価値があることから、卒FIT設備の所有者との関係構築に様々な企業が乗り出した。スマートテックが18年6月待つに卒FIT設備の太陽光電力の買取り受付を開始すると、ガスや石油元売りなどのエネルギー会社や、住宅メーカー、地域宣伝力会社が買取りなどの複合サービスを発表。参入企業は50社ほどに及ぶとみられる。
 もっとも、卒FITの所有者は、19年に53慢世帯、20年20慢世帯で、それ以降も毎年10慢世帯以上現れる。20年6月30日にはスマートテックが買取り契約数1万件を突破するなど、実績もあがりつつある。だが、競争が激化しているわけではなさそうだ。
 理由として、卒FIT設備の所有者に大手電力会社以外が接触しにくく、公平な競争環境ではないとの指摘もあるが、そもそも、買取り単価が電源の価値と見合っていないのである。
 まず、太陽光発電の導入拡大で日中に電力が余り、市場価格が下落した。スポット単価でkWhあたり0.01円をつけることもあり。つまり、0.01円で調達できるにも関わらず、先の企業は7円や10円で卒FIT設備の太陽光電力を買取っている。環境価値が加わるにしても値差は大きい。
 しかも、卒FIT設備の所有者に対して企業がkWhあたり1円高く買い取っても、設備所有者の年間売電収入にして数千円程の利益さに次ぎず、企業は競合他社との差別化を見出しにくい。それだけに、エネチェンジの有田一平社長は、「卒FIT設備の電力を買取る企業の多くが契約獲得に積極的ではない」と話す。同社は卒FITの所有者に無料相談を行い、それぞれに適したサービスを紹介しているが、協業する企業は数社にとどまっているという。
 さらに、有田社長は、「卒FIT設備は長期的に必要な電源だが、現時点で企業にとっての買取り価値は限定的だ。蓄電設備の販売や電力小売りと合わせた複合サービスが中心になるのではないか」と想定する。
 早くも19年末に卒FIT設備由来の太陽光電力の買取りから撤退した新電力会社もある。同社の担当者は、「FIT満了を迎えても、現行の電力会社との契約が自動継続される。一方で、10円以上で買取る企業も現れ、競争に勝てないと判断した」と明かすが、同様の動きが増えてもおかしくないだろう。

活路は地産地消か

 卒FIT設備由来の太陽光電力の価値を高めるには、集めた再生可能エネルギー電力の使い道も重要だ。『RE100』を宣言する企業などへの供給だけでなく、地産地消もひとつであろう。
 自治体を支援するトラストバンクは、卒FIT設備の再エネ電力を好きない地域に寄付できるプラットホームを開発、19年9月に利用を開始した。地域新電力会社などと連携し、地産地消を支援する。現在12社の地域新電力会社が参画しているが、「自治体と協力し、広報活動や説明会を積極的に行う地域新電力会社は順調に契約を獲得できている」(同社エネルギー事業本部の前田功補本部長)。
 環境省によれば、50年までにC02排出実質ゼロを目指す自治体が6月25日時点で101に及ぶ。ならば、環境価値のある卒FIT設備の太陽光電力は重宝されるはずだ。事実、東京都は契約する小売電気事業者の卒FIT設備由来の再エネ電力の買取り単価にkWhあたり1.5円を上乗せする事業を始める。買取った再エネ電力を都有施設で消費していく予定だ。
 とはいえ、自治体の予算や人材にも限りがある。トラストバンクの前田本部長は、「自治体からは、地域新電力会社が存在しないものの、卒FIT設備の再エネ電力を活用したいという声もある」とし、同社は20年5月に小売電気事業者への登録を完了。必要に応じて電力供給などを含めた支援を検討していく構えである。

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